怒れなかった娘の言い訳

冴木さとし@低浮上

最終話 私は祈った。

 1人でおままごとをしている6才児の娘、サクラを呼んだ。

「今日は何が食べたい?」

「んーとね、オムライス!」

「じゃぁ、オムライスにしよう」

 それを聞いて喜ぶサクラ。


 私は早速、冷蔵庫を確認する。

「マヨネーズと卵と玉ねぎと鳥もも肉がない。他のは諸々あるのね」

 私は足りない食材をみて、サクラの買い物のいい練習になるかなと思った。


 オムライスもサクラと一緒に何度か作ったことがある料理だ。それを思い出せればそうそう外れたものは買ってこないだろう。


「マヨネーズ1本と卵1パック、玉ねぎ1個、鶏もも肉150グラム。お店に行って買ってこれる?」と私は聞いた。「はーい」とサクラは答えてくれる。牛や豚のお肉を買ってきても、純粋なオムライスから外れるだけ。サクラが買ってきて作る料理だ。夫も文句は言わないし笑い話ですむだろう。


 ところがサクラはアイスクリームを買ってきた。


「マヨネーズを手作りすればいいから、余ったお金でアイスクリームを買ってきた。そういうのね?」 

 サクラは視線をそらして「うん」と答え口笛吹いてた。悪いことしてる自覚はあるみたい。でもこの言い訳は賢いと思った私は

「ちゃんとアイスクリームが欲しいなら、欲しいって私に言ってからお買い物してくるのよ?」


「アイスクリームをたべたかった、あたしのかち!」

 と自信満々な笑みを浮かべるサクラの頬を、私はやさしく人差し指でつついた。

「でもちゃんと料理の作り方を覚えてたのはえらい」とサクラを褒め

「じゃぁマヨネーズ頑張って作ってみる?」と聞いてみる。

「うん!」と元気いっぱいに答えてくれるサクラ。


 泡だて器で卵と悪戦苦闘して半泣き状態になっているサクラを手伝う。程なく手作りマヨネーズを完成させて準備完了。家族みんなで席につき「いただきます」と手を合わせる。サクラと夫の顔を見てこんな幸せな日常がずっと続きますように、と私は祈った。



 終

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