All-nighter Baseballのアンラッキー7(月光カレンと聖マリオ17)

せとかぜ染鞠

第1話

 爆弾過激犯から俺の日記を預かった中国人が殺された。犯人は女賊に属する娘だ。賊の首領が御法度を犯した娘をなじれば組んず解れつの大喧嘩がはじまる。娘が中国人から奪った日記7冊をこっそり御返却いただいたあと,仲裁に入り,事情を尋ねる。押しだまる娘が身をよじらせて倒れた。頭を撃ちぬかれている。筋肉フェスティバルに狂乱する人々を搔きわけて逃走する大男を追った。

 記憶障害の三條さんじょう公瞠こうどう巡査を残していくことが案じられた。

 大男はドーム球場に逃げこんだ。

「オールナイターベースボールもいよいよ7回です!」実況アナウンスと同時に噴射されたスパンコールが月光を帯びながら乱反射を織りなす黄金世界で,0対0の攻防に精神を摩耗する選手も観客も,極限の興奮に武者震いがやまずかれたみたいに声を発する。叫喚の坩堝るつぼから画然と切りとられた言葉が聴解された。「ホームランだ。さもなくば息子をる」内戦の続く野球王国オオダルササヤマ連邦の言語だ。

 軍服姿の男らが少年を拘束していた。マウンドでは連邦出身のピッチャーが片耳を押さえて絶望の面もちで棒だちする。恐らく耳奥に隠す受信機が八百長指示をキャッチしたのだ。応援と野次がピッチャーを責めたてた。

 男らを気絶させ,少年を奪還した。

 一味の送信マイクを拝借し,少年に伝えさせる。「パパ,月光カレンのおじちゃんが助けてくれたよ!」

 おじちゃん……感傷を覚えつつも少年を肩車する。

 ピッチャーが表情を輝かせ,バッターを三振にしとめていく。歓喜と失望の渦巻く観客席より遥か高位のVIPルームに一組の男女がいた。電流にも似たものが体内を駆けめぐる。

 VIPルームに女賊の娘を撃った大男が駆けこむ。色つき眼鏡をかける女が俺を見たようだが,すぐさま背を翻す。

「おじちゃん,危ない!」頭上の少年が悲鳴をあげるなり,胸を刺された。

 オールナイターの7回はアンラッキーに転じた。

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