トリプル・7

律華 須美寿

トリプル・7

「お会計、777円になります」

 タクシーを降りるときそう言われた。そんな半端な値段?と思わないでもなかったが、メーターには確かにそう表示されているし、仕方がないので大人しく777円支払った。

「これがパチンコなら大喜び出来たのかな……」

 再び走り出したタクシーをぼんやり見送りながら思う。残念ながら私はパチンコをやったことがないのでよくわからないが、人によっては大問題だったのかもしれない。

「まあ……いっか」

 歩きだす。こんなことをしている場合ではないのだ。今日、わざわざ隣町までタクシーでやってきたのは他でもない。駅前の大型商業施設に新設された、都内の有名ケーキ屋さんの支店に向かうためなのだから。テレビとかでも何度も紹介されている有名店だ。早く行かないと目ぼしいスイーツは売り切れてしまうだろう。既に行列はできているのだろうが、せめて、列が長くなる前に――

「わっ!?」

 目の前に、真っ赤な一つ目。赤信号だ。

「危なかった……!」

 うっかりしていた。完全に思考がケーキ屋に行っていた。このまま進んでいたら轢かれていた。ありがとう。ラッキーセブン。

「……とか言ってる場合じゃないな……」

 気をつけないと。本当に。


 結論から言えば、ケーキは買えなかった。施設の入り口で派手に転び、鞄の中身をばらまいたせいだとは思わない。

 思わないが、そのせいで行列が伸びたのは事実だ。

 そして更に、丁度私の目の前で売り切れになったのも事実だ。

 しかし話はそこでは終わらない。

「巡り合わせって……あるものなのかも……」

なんと、あの日あの店でケーキを買った客のほぼ全員が食中毒にあたったのだ。

 あのままケーキを買っていたら。立て続けに『三度も』不幸な目にあっていなかったら。私も病院行きだったかもしれなかったのだ。

「逆ラッキーセブン……?」

 あれは間違いなく、言永ことながひかり至上、最も不幸で幸運な『777おおあたり』だった。

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トリプル・7 律華 須美寿 @ritsuka-smith

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