アンラッキー7

井澤文明

2023/3/15 ██書店

 早朝の██書店。テーブルに本が置かれていた。


 子供向けの児童書や話題の本、参考書や雑誌などが置かれている何の変哲もない書店だが、置かれていた本は古びており、作りが甘いことから出版されたのではなく自作であることは明らかだった。


「『アンラッキー7』───」


 書店のテーブルに置かれた本のタイトルを常連客の金剛和臣は読み上げた。


「最近、変なことばかり起こるのよね。お祓い行った方が良いかしら」


 書店を経営する██夫人は不安そうにため息を吐く。漫画を買うために来ていた金剛と友人の石黒祭は顔を見合わせ、頷く。


「おばちゃん、この本ちょっと見ていい?」

「いいわよ、壊さないように気を付けてね」


 本を手に取った金剛は頷き、宝物を触るように本を開いて横に立つ石黒と読み始めた。


 『アンラッキー7』───。

 売れない小説のようなタイトルの本は、七つの『呪い』に関する出来事を取り扱った本だった。

 本の表紙は古びていたものの、本文で使用されているフォントは明朝体で最近の書籍で見慣れているものだった。

 目次には、それぞれの出来事が起きた日付と場所が記入されていた。


「2023年3月───え、最近じゃん」

「最近っていうか、この間やな」


 最も古い章には『2023/3/3 ██書店』と書かれ、書店の名前が隠されていたものの、自分たちがいる場所のことを指しているのだと二人はすぐに察した。


「誰かに見られてた、ってこと? それともイタズラ?」

「前にあの女の人が言ってた、『僕のことを知ってる人』覚えてるか? その人が関わってるのかもしれん」


 二人は押し黙った。██夫人も詳細は知らないものの、何か良くないことが起きているのだと察し、口を手で押さえた。

 目次は「2023/3/3 ██書店」、「2023/3/5 四〇九号室」、「2023/3/7 ██通り」、「2023/3/10 姿見鏡の前」、「2023/3/11 ██書店」、そして今日の日付が記されている「2023/3/15 ██書店」と続いていた。

 もちろん、七つ目の章も存在した。

 ごくりと唾を飲む。

 激しく脈打つ心臓の鼓動を抑え、この先の未来に対する恐れと期待を抱きつつ、二人は七つ目の章へページをめくったのだった。




─────────

最終編集日:2023年3月15日 11:35

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アンラッキー7 井澤文明 @neko_ramen

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