運命数に囚われた女【KAC20236】
松浦どれみ
いつの間にか小さな恋が芽生えていたり……。
「7はこの子の
母はまだ私がお腹の中にいる頃、通りがかりの路地にいた占い師にそう言われたという。
確かに私の人生、7歳の時に絵画コンクールで市長賞を受賞以来、いつも7という数字が人生に関わってきた。
そして27歳。今年はきっと素敵な人と出会って結婚するに違いないと思っている。
だって7は私の運命数。ラッキーナンバーなんだから。
「イケメン商店街?」
「そう! ここ、イケメンが多い商店街で有名なの。お願い、友達のよしみで合コンさせて!」
彼女は最近地元で話題の「ぽんぽこ商店街」7丁目で祖母の洋品店を受け継ぎ営んでいる友人。
「ええ〜めんど〜」
「
私が友人に手を合わせて頼み込んでいると、背後から男性の声が。
「あ、
少しダサいけど、背が高いし声も艶っぽい。これはきっと前髪あげるとイケメンに違いない。
「初めまして、装子の親友の
「え? 僕を……紹介?」
「はい、黒井さんもぜひ♡」
「は、はい!」
にっこり微笑んで首を傾ける。
これで相手に好印象を与えられるのは他で実証済みだ。
そして週末、私は引き立て役を何人か連れて商店街の彼らと合コンを開始。
イケオジがいる洋食店で、お酒と料理とイケメンを堪能する。
一人は坊主頭のワイルド系イケメンだけど、さっきから刃物について演説しているので圏外とする。狙い目はやはり書店の黒井さんだ。
「装子さん、私たち付き合ってるのに合コンてなんですか!」
「付き合ってる? なんのことですか?」
「だってもう何度もこの店でデートしたでしょう?」
「え、マジか……。黒井さん、そういう感じなんだ……」
残念ながら目をつけていたイケメン黒井さんは友人狙いだったらしい。
「七星さん、装子さんたちは取り込み中だし、抜けません?」
「うん、いいよ」
ラッキーなことにもう一人のイケメンあやめくんが私を誘った。
少し軽そうだけど、いくらなんでも知り合いの友達にひどいことはしないだろうと、私は彼の誘いに乗った。
「ここ……あやめくんのマンションなの?」
「はい、そうっすね」
大当たり。街の中心部のタワマンなんて。
私は舞い上がる気持ちを抑えられなかった。
しかもあやめくんの部屋は707号室。運命だ。
「おじゃましま〜す」
「は〜い」
「ううっ……!!」
突然、首に何かが引っ掛かる。
あやめくんの腕だと気づいたのは、彼の息遣いが耳元にしっかり聞こえてきたから。
「俺、大好物なんですよ。自分のことお姫様かなんかと勘違いして、選ばれるのが当然ってツラしてるバカな子が。そういう子が自分のバカさ加減を呪って死んでいく姿が最っ高に好きなんです」
「……ぐっ……」
「大丈夫、朝までゆっくり時間をかけるからね」
あ、間違った。
7は私の運命数。そう、いいことだけじゃない、悪い事も含め。
つまり、ラッキーナンバーであり、アンラッキーナンバーでもあるんだった。
薄れゆく意識の中、私は自分の浅はかさを嫌というほど思い知った。
◇◆◇◆
一方、合コン会場となったキッチンクレタでは……。
「装子さん、あやめくんが七星さんを連れていってしまいました……」
「はあ、そうですか」
「きっともう会えません、大丈夫ですか?」
「ああ、平気です。もう十年近く連絡取ってないのに急に親友とか言い出す子、苦手なんで」
こうして抜け出した彼女たちを気にする者はおらず、夜は更けていった。
運命数に囚われた女【KAC20236】 松浦どれみ @doremi-m
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