002 死語の世界

 さて、第二回目の議題なのだが……。


 一体、どんなものにしようかと悩んだ末、文章に関係あるものはどうだろうかと。


 そう思った次第である。


 というわけで今回は死語というものについて語ってゆこうか。


 言葉は、輪廻転生、生まれて死ぬを繰り返すものであるから、


 ある意味で当エッセイの趣旨には、そぐうだろうと判断した。


 無論、オカルトや都市伝説を語る当エッセイでは死語よりも死後の世界の方が適切であると思われるが、敢えて肩すかしとも言える死語でいこうと思う。ただし、最後まで読んで頂ければ必ずや読者諸氏の期待には沿えるとだけは言っておこうか。


 では、まず、死語の定義なのであるが、過去に流行ったが今は廃れた言葉とする。


 つまり、


 辞書などで解説される死語の意味である、以前には用いられたが、今では用いられなくなった言葉とは、いささか定義が異なる。ゆえに、ここで用いられる死語は真の意味で死語ではないのかもしれないとだけは断っておく。さて、始めてゆこう。


 初っぱなを飾る死語は……、ゲロゲロでいこうか。


 ゲロゲロとは嫌な時や驚いた時に発していた言葉であり、分かりやすく言い直すと凄く嫌ですとなる。ゲロゲロの内、ゲロを一つだけを取り出して、ゲロウマと言ったり、ゲロマブと言ったりもした。ゲロが単体になると凄いという意味になるわけだ。


 つまり、


 ゲロウマは凄く美味い(もしくは上手い)という意味である。


 食べ物などに対して凄く美味しいという意味で言ったり……、


 なんらかの創作物に対して、この上もない賛辞としてのゲロウマがあったわけだ。


 そして、


 ゲロマブは、……いや、もはやマブいが死語であるのだが、敢えて素通りすると、


 凄く可愛い(※ゲロマブのマブは可愛いという意味)となる。もちろんゲロゲロのゲロを単体で取り出すと良い印象は受けない。ゆえに、今現在、ゲロウマやゲロマブは通用しないし、使用すると、むしろ蔑んでいるようにも捉えられてしまうだろう。


 確かにゲロゲロとは凄く嫌だという意思表示にもなるからだ。


 しかし、


 分解してみると、ゲロゲロの内、始めのゲロは凄いで、続くゲロが嫌だという意味になる。ゆえ、ゲロウマやゲロマブなどは良い意味で使われるのだとも分かる。分かるが、それは流行っていた当時の話だ。今は、やはり良い印象は持たれないだろう。


 では、二つ目の死語なのだが……、ジベタリアンとしようか。


 ジベタリアンとは流行った当時、地べたに座る若者を揶揄した言葉だった。類語として路チューなどがあるらしい。路チューというと路駐と響きが似ており、ともすれば路上駐車を思い浮かべてしまう。しかし、死語としての路チューの意味は違う。


 つまり、


 道ばたで人目も気にせずキスをする男女を指す言葉なわけだ。


 路上でチューする、という事である。


 ジベタリアンという言葉もそうだが、路チューなどといったものは、もはや、そんな言葉あったのかと言ったレベルで新発見とすら言える。筆者自身、ジベタリアンの世代ではあったが、路チューという言葉は全く知らなかったくらいだ。


 むしろ、


 路チューと聞いて、やはりというべきか、路上駐車を思い浮かべたと記しておく。


 さてと。


 三つ目の死語なのであるが……、メンゴとしよう。


 メンゴはゲロゲロとも似てはいるが、似て非なるものである。


 メンゴは、倒語とも言われるもので、当事者間だけで通じるよう約束された、音の配置を逆さにしたり(※種をネタというように)、内容の逆を言ったりする表現方法となる。つまりメンゴはゴメンの倒語である。この語が流行った当時……、


 ものほん、くりそつ、ワンバンコ、ジャーマネ、ワイハー、シーメーも流行った。


 これらの意味は各々で調べてもらう事として……、


 このメンゴなどが流行った背景には業界人ぶるという風潮が世間一般に浸透していたからだ。そして、これらの倒語がテレビ業界で使われていたからこそ流行ったと言える。今でも使われている言葉としては、まいうー、が、その代表格だろうか。


 ともかく皆が芸能人気取りで倒語を使っていたというわけだ。


 ただし、


 倒語の歴史は古く、江戸時代には、すでに存在していた。例として、新しい(あたらしい)があり、実は、新たしい(あらたしい)の倒語なわけだ。無論、今では新たしいなど書こうものならば、すわ誤字や誤用の類いだと思われてしまうだろう。


 新たしいに関しては正確な語が死語と化した良い例だろうか。


 と、ここまで、今では使われなくなった死語を紹介してきた。


 そして、実はここからが本題となる。


 さあ、満を持して聞こうではないか。


 読者諸氏はマンデラエフェクト(マンデラ事例)というものを、ご存じだろうか?


 マンデラエフェクトは、2010年頃から言われ出した言葉で、南アフリカの指導者であるネルソン・マンデラ氏に由来した造語となる。正確には事実と異なる記憶を不特定多数の人間が共有している現象を指すインターネットスラングとなる。


 つまり、


 件のマンデラ氏が、2010年当時、存命中にも拘わらず、1980年に獄中死していたという記憶を持つものが大勢、現れたからこそオカルト界隈で語られるようになった言葉なのである。ただし、この言葉は学術的に扱われるものではない。


 一般的にはインターネットなどによって流行的に広まったミームの一種とされる。


 ミームとは、特定のコミュニケーションツールによって人から人へと拡がってゆく行動やコンセプトなどをいう。最近、流行っている言葉を使うならばバズるというものもまたバズマーケティングの略であり、インターネット・ミームの一種となる。


 兎に角、


 マンデラエフェクトに話を戻そうか。


 マンデラエフェクトは事実とは違う(思い違いも含めた不可解な)記憶が大勢で共有されている状態をいう。それは存命している人物の訃報や追悼番組、創作物において作中には実在しない場面や台詞、実際と異なるキャラや商標など多岐に渡る。


 事例をあげると、故人が実際よりも以前に死亡していた記憶の代表格として……、


 モハメド・アリ氏が死んだ時期に異を唱える者が多数いるというものであろうか。


 実際には2016年6月3日に死んでいるのだが、90年代に試合中、負った脳損傷によって死んだと言い出す人と2013年にパーキンソン病で他界したと主張する人々が現れたわけだ。それも、一人や二人ではなく、数多くの人物たちが……、だ。


 地図の話題で言えば、オーストラリアの位置が、それとなる。


 画像があげられないのが残念ではあるが、実際、オーストラリアはインドネシアとパプアニューギニアに近接している。その間、200海里(※370.4km)くらいしかない。そして、それ以上に離れていたと主張する人々が多数いるのだ。


 面白いところで言えば……、C-3POに関してのマンデラエフェクトであろう。


 C-3POとは有名な映画、スター・ウォーズに出てくるロボットなのであるが、


 読者諸氏は、件のC-3POが、全身金色だったと記憶してはいないだろうか。しかし、実のところ右足の膝から下は銀色なのだ。これについてC-3POの演者であるアンソニー・ダニエル氏が、この部分は始めから銀色だったとも言っている。


 それでもフィギュアで全身金色で塗装されているものもある。


 商品化する際には決して間違いがないよう話し合いの場がもたれるにも拘わらず。


 ただし、


 この話に関しては、スター・ウォーズ内の歴史(エピソード)によって、全身金色になったり、片足が銀色になっていたりと統一されていなかったとされる説もある。もちろん、映画の公開順も作中の歴史通りではないがゆえに起きた混乱だとも……。


 同じような話はピカチュウにもある。


 ピカチュウの尻尾の先が、黒い、或いは白いといったものだ。


 正確には黄色いのだが読者諸氏の記憶はどうだっただろうか?


 このように如何とも不思議なマンデラエフェクトであるが、ここで死語へと戻ってもらいたい。思うのだが、筆者自身、死語を調べ、内容を精査する内、あれ、これって記憶と違う。もしくは、そんな言葉は知らないというものが多々あった。


 ゲロゲロは、その成り立ちから意味まで、確かに記憶通りではあったのだが……、


 ジベタリアンの関連で調べて知った、路チューという言葉は聞いた事もなかった。


 無論、単に自分の周りが使っていなかったからこそ知らなかったとも言える。しかしながらメンゴを調べる過程で思いを改めた。ここに記す為、当時、流行ったと思われる様々な倒語を調べてゆくと、明らかに知らないものが多数、混じっていたのだ。


 タクシーを意味するシータク、意味は敢えて伏せるがパイオツカイデーなどなど。


 少なくとも、筆者は、これらの倒語が出てきた頃、


 パイオツカイデーは言いそうな人種であったのだが、知らなかった。無論、それでも単に知らなかったというだけでマンデラエフェクトではないのかもしれない。しかし、死語とは過去の流行語とも言えるものだ。つまり、ネコも杓子もが当たり前。


 ゆえにTV番組などで耳にする機会は事欠かなかった状況とさえも言えるわけだ。


 加えて、


 当時、パイオツカイデーという言葉を好んで使ったであろう筆者にとっては……、


 それを知らなかったという事実が不可思議過ぎた。


 アンテナは確かにそちらに向いていたはずなのに。


 それでも知らなかった。


 いや、やはり単に知らなかった、或いは忘れてしまっているとも思えるが、今回、死語を取り上げるにあたり、例にあげた語以外の死語を調べれば調べるほど、そういった事例に多く突き当たった。マジ卍が死語となり久しい近い過去も含めてである。


 しかし、


 実は、その知らなかったという記憶は大した意味をもたない。


 改めて確認するまでもないが、マンデラエフェクトとは……、


 筆者一人だけの記憶では、決して成り立たつ事がないからだ。


 不特定多数の人間に、そう言えば確かに、と同意が得られ、その数が膨大になった時、初めてマンデラエフェクトとなり得る。ゆえに当記事は、そういった同意を得る為に死語を改めて見直したわけだ。ともすれば、ここにあげた例だけではなく……、


 つまり、死語に改めて注目する事で、


 新たなマンデラエフェクトが生まれやしないかと願うわけだ。


 同時に。


 死語を知らないという現象が単なる思い違いに過ぎないのだとするのならば……、


 上記に記したモハメド・アリ氏の話やC-3POの事例なども単なる思い込みの末に起こった思い違いに過ぎないと思うわけだ。ただし、そのどちらかが正解なのかなどという無粋は、ここでは控えようか。ともかくオカルトは信じる人次第なのだ。


 無論、無責任にも、信じるか信じないかは貴方次第などと突き放すつもりはない。


 だから、


 こうとだけは最後に言っておこうか。


 オカルトを信じる人にはマンデラエフェクトは在った方がいいし、信じない人には単なる思い違いに過ぎないでいいのだと思う。筆者の立場としてはマンデラエフェクトというものが在ったら面白いが、多分だけども思い違いなんだろうな、と……。


 というわけで新たなマンデラエフェクトが生まれる瞬間を夢見て今回は終わろう。


 また、なんらかを語る機会があれば。


 チャオ。

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