006 陰謀論
さて、第六回目の議題なのだが……。
今一度、ここで筆者自身が考える陰謀論というものについてまとめておきたい。
今の筆者はこう考えるというものだ。
もちろん筆者はオカルト懐疑論者であり、オカルト好きには、少々、耳が痛い話になるやもしれない。それでも筆者は肯定論者寄りでもあるから単純に否定だけして終わるという事はない。むしろ問題提起をしたいと願っているからこそ。
懐疑論者にも、肯定論者にも、何かしらを感じて頂き、その上で考えて欲しい。
そう願って今回の記事を書き下ろす。
さて、では大前提としての筆者の立場を明かしてから始めよう。
筆者は、陰謀論などで、特定の人物及び特定の組織を貶めるような論調が好きでない。いや、むしろ憎んでいる。そういった論調でオカルトを語られるのが、どうしても許せない。オカルト話を聞くのが好きだからこその憎悪と言えるだろう。
無論、それも、また一つの意見なのであるが、それでもなのだ。
そして。
そういった論調の陰謀論を語る方に、こう問いかけたいわけだ。
なんでも良い。なんでも良いから、その陰謀論の主人公が君だったら、君は、どう思う? どう感じる? とだ。無論、陰謀の種類は人口削減計画などの壮大なものでなくてもいい。それこそ財布を盗んだのは、一体、誰だ? 計画でいい。
いや、むしろ、その方が分かり易い。分かりやすく解説できる。
ある日、
……A君が体育の授業で外出していた間にA君の財布が忽然と消えた、とする。
その実、
単にカバンの中が乱れていて雑多に紛れ、A君が見つけられなかっただけなのだが、A君が発狂して、誰が犯人なんだ? と騒ぎ出す。もちろん、そんな非日常はA君のクラスメートも慣れていない。だからこそ犯人捜しが始まってしまう。
その様は、まるで陰謀論のソレなのだ。少なくとも筆者は、そう思ってしまう。
そして、その果て、犯人は君だ、と言われてしまう。
そうだ。陰謀論を語っていたオカルティストの君だ。
もちろん身に覚えはないのだが、それでも、もっともらしい理由をつけて君は追い詰められる。しかも身に覚えがない人格否定まで交えて。更に言ってしまえば君を犯人にする事で自分に利が在るものがいる。その人間が声を高々に言う。
そいつが犯人だ。そいつが諸悪の根源だ。備えよと。
君を犯人にする事で己に利〔儲け〕が出るからこそ。
ククク。
と……。
裏で笑い。その陰謀論のソレこそが陰謀論然なのだ。
さあ、ここで応えて欲しい。陰謀論を面白可笑しく語る者達よ。ハッキリとだ。
陰謀論の餌食にされた君は、どう感じ、どう思うと。
うむっ。
無論、実際の陰謀論は今の例以上に酷い。例では君が貶められる事で陰謀論を語る者に利が出ている。が、実際のソレは陰謀論を信じて聞く者も、また利を貪る為の養分となっている。それを分かった上でオカルトとして楽しむ分にはいい。
だがしかし、残念な事に肯定論者は、その事実に気づいていない事が多々ある。
面白いから見よう、で、傷つく人や団体が在るのだ。
ならば、逆に傷つけられても仕方がないという覚悟はあるのかと問いたいのだ。
面白可笑しく笑って、もしくは興味津々な好奇心で他人を傷つける事に罪悪感を覚えないのが問題なわけだ。加えて、そうやって無自覚で楽しみ陰謀論を広める事で不利益を被る無辜の民もいるのだと、それが分かっているのか、という事だ。
そして。
結局、陰謀論はエンタテインメントだからと、のたまう方にも、こう問いたい。
君は無実かもしれない特定の個人や特定の組織をだ。
つるし上げて、魔女裁判でもしたいのか? と……。
大衆が魔女裁判を望み、自分は正義の立場に立っているからこそ、これは娯楽です、皆さん楽しんで下さい、と特定の個人や特定の組織の切腹を促し、あまつさえ死んでくれれば最高のエンタテインメントだ、と高笑いでもしたいのかとだ。
うむっ。
この問いに応えてくれる誠実なオカルティストはいないだろう。悲しい事だが。
むしろ、
面倒くさい事を言うヤツだとスルーするのだろう。なんとなくだが、そう思う。
無論、ここで、この記事は終わらない。……むしろ、ここからが本番なわけだ。
そうだ。
陰謀論が、もし、そういった語る者の利によってだけ為っているものならば、ここまで世の中には浸透しない。火のない所に煙は立たないという言葉が在るよう実は陰謀論の中にも真実が混じっている場合もある。それを忘れてはならない。
敢えてで、懐疑論者にも分かりやすい例を挙げ、話を進めようか。
つまり、SFという創作のジャンルで昔から語れ続けてきたパラレルワールド。
それが初出した頃はパラレルワールドなどオカルトでしかなった。
そのパラレルワールドも昨今の科学では在る確率が高いとされる。軌道エレベーターも、また創作界隈から火がついた。無論、当時は実現不可能な技術とされていた。ヒッグス粒子の存在もそうだ。神の粒子と呼ばれ、存在があやふやだった。
それら全てがオカルトという一言で片付けられる可能性が在った。
確かに。
しかし、
陰謀論で語られるソレのよう在ると信じたものが、それら全てを実現〔発見〕していく。いや、軌道エレベーターは充分に実現可能までしか来ていないが、それでも信じた者達の手によって、その理想を最期まで完遂しようとされている。
ただし。
言うまでもないが陰謀論のソレとは真逆な属性。正の側面である。
陰謀論は負の側面のソレであるから、ともすれば達成されてしまうと不味い。ゆえに阻止すべしという行動も、また人間の正常な判断だ。ただし、陰謀論の、ほとんどは嘘で塗り固められた砂上の楼閣でしかないものだと断言しておこう。
何故、そう言い切れるのかと問われれば落ち着き陰謀論を見渡せばと応えよう。
そこに科学的根拠を裏付ける為の知識も哲学的な思考も必要ない。単に陰謀論を構成するロジックを分解して分析したあと今の社会に当て嵌めれば良いだけの話だ。ほぼ全ての陰謀論は、それに耐え得るだけの理論構築がなされていない。
むしろ利を貪る輩達によって粉飾され、過剰演出されている事が分かるはずだ。
いや、だからこそ、裏を返せば、より慎重にならざるを得ないのかもしれない。
火のない所に煙は立たないから余計なノイズを取り払い真摯に対応するべきだ。
ともすれば今の日本人は平和な日常生活を送っているからこそ平和ボケ的に曇った眼〔まなこ〕では大切な事を見落とすやもしれぬのだから。うむっ。だが、それでも筆者の立場は変らない。ほぼ全ての陰謀論は取るに足らないものであると。
ただし。
その中に、玉石混交、ある種の本当にヤバいブツが隠れているのかもしれない。
ゆえに、繰り返しにはなるが、筆者は、これからも慎重に陰謀論に対しようと。
そう締めて今回の記事を終えようか。
また何かあれば語らせてもらえれば。
チャオ。
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