私の嫌いな「わたし」
にわ冬莉
第1話
嫌い。
私は全部が嫌い。
お父さんの髪が薄いのも、お母さんが太ってるのも、親譲りの一重で全然可愛くない顔も。
家がお金持ちじゃないのも、弟が生意気なのも、成績が中の下なのも、運動神経鈍いのも全部嫌い。
この前だって体育の時間、バレーボール頭で受けるとか、有り得ない。
何でああいう時、女の子って『ちょっと抜けてる感じ、可愛いよ』とか嘘言うの?
そんなわけないじゃん。
ただの運動音痴だもん。
嫌い。
運の悪さも、いつもこうやってうじうじ悩んでばかりなのも全部嫌い。
占いも嫌い。
今日一番ラッキーな星座はふたご座だって。ラッキーナンバー7って、なによ? 嘘じゃん。今日は7日だけどなんにもいいことなんかないもん。
こんな風に毎日がただ過ぎてくだけなのも、それを黙って受け入れるしかない自分も、みんな嫌い。
委員会で遅くなった放課後、急に降り出した雨。
傘なんか持ってないよ。友達はみんな帰っちゃった。
ほら、全然いいことなんかない。
「どうしたの?」
昇降口で急に声を掛けられた。
「もしかして、傘…ない?」
えっと、誰だっけ? 確か一組の子。ひょろっと背の高い、男の子。
「あ、うん。雨で…傘なくて」
知らない子に話し掛けられて、ちょっとしどろもどろになった。お喋りが下手な自分も、嫌い。
「これ、」
「え?」
紺色の折り畳み傘を差し出され、戸惑っていると、
「返すのはいつでもいいからさ」
「でも…、」
「あ、いきなり知らない男子に傘借りるのキモイ? ごめん、でも好きな子が雨に濡れるの嫌だから」
「…へっ? す…き? ええっ?」
急にとんでもないこと言われて頭がバグる。
「俺、一組の
「え? え? なんで…? 私?」
私が嫌いな私を、この人は好きって言った!?
「理由? 説明してあげる。じゃ、一緒に帰ろうか」
今、最終下校を告げる19時の鐘が鳴った。
私の嫌いな「わたし」 にわ冬莉 @niwa-touri
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