P・アンラッキー777

宮塚恵一

アンラッキー777

 7・7・7。


 ──やった!

 目の前に並ぶスロットの表示に、わたしはガッツポーズした。

 じゃらじゃらと銀色の球が流れる音が耳に心地よい。

 今日も大勝ちだ。最近のわたしは本当についてる。


 パチスロでの連日の大勝ちに、アタシは内心ウキウキだ。いつもわたしの前に並ぶのは「7・7・7」。勝利の数字だ。今夜も酒が旨かろう。


 店から出た後にウキウキで交換所に寄ってから家に向かう。


「おっと」


 急に突風が吹いて、目の前に、ビニール傘が飛んで来た。

 わたしはそれを避けきれずに肩を擦ってしまう。


「あちゃ、油断した」


 昨日の雨でポイ捨てされたビニール傘がどこかにあったのだろう。

 それが飛んでくるなんて運が悪い。だが、これで良い。


 わたしはポケットの中から、を取り出した。

 一カ月前、パチスロで大損した帰り道、喪失感に心をぐちゃぐちゃにされている時に拾ったものだ。

 掌にすっぽり収まるくらいの、猿の置物のようなキーホルダー。

 次に駅に寄る機会にでも交番に届けるかと拾ったもの。


 その次の日は、そんなものを拾ったことは忘れ、またパチンコに寄った。するとどうだろう。

 昨夜の大負けを上回る馬鹿勝ち。

 わたしは大喜びで家に帰り、ひとり祝宴をあげた。


 その次の日も。その次の日も。


 わたしは大勝ちした。

 そして気づいた。

 このは、あのを拾った日から続いている、と。


「──おっと」


 今度は頭上から、植木鉢が降ってきた。

 漫画のような不運だ。


 お守りが齎すのは、777の幸運だけではなかった。パチンコからの帰り、こうして必ず不運が起こる。


 けど、この不運さえやり過ごせば、わたしはまた大勝ちできる。

 この分だと、明日もきっと幸運だ。


 そう思っていると──。


「ごめん!」


 わたしは背中を押された。

 急いで走ってきた通行人に押し出されたらしい。


 わたしはバランスを失い、車道に倒れた。

 ふと見ると、大きなトラックがわたしめがけて──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

P・アンラッキー777 宮塚恵一 @miyaduka3rd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ