最終話 生き直し
「おーきーてー! ローギ! 起きろ起きろ起きろ起きろ!」
「……うー……るせぇなあ……たまの休みくらい」
寝返りを打ちながらむにゃむにゃと寝言のように返す。
「今日はみんなと遊園地行くんでしょ!?」
「ああ……そうだったな……今何時だ」
言いながらも
「9時!」
「……だから……まだまだ余裕じゃねえか——9時!?」
「そう!」
置時計をもう一度見る。秒針が進んでいない。
「うーかーこー」
「なに?」
「お前、まさかまた電池を入れ替えたのか?」
「うん! ローギがこの間、向こうの掛け時計が動いてないと不便だって言ってたからね。偉い?」
「偉くねぇぇぇぇぇえええ!! どうしてそういう発想になるんだよ!」
「ええ!? なんで怒ってるの!?」
「うるせえ! お前のせいで遅刻しちまうだろ!」
「なんであたしのせい!?」
「うるせえ!」
駅まで向かって走っていく。
あのあとラボは実質消滅した。公安の人間が来たときに、
公的な機関が、オープンにできない研究をしていた。国民に不安を与えないためには、これに対して口を噤むほかなく、ラボ職員に対する正式な手順を踏んでの送検や刑罰は望めなかった。ただし、一生社会復帰できないよう、
「似合う服を、ローギが選んでよ」
彼女はそう言ったが
「お前が着たい服を着るんだ。誰かに似合うと言われた服じゃあなくてな」
そのとき買った服を、彼女は今日のお出掛けに着ていくのだとはしゃいでいた。
そして今、
桜色のキャスケットに白いノースリーブ、ベージュのジャンパースカートに帽子と同じ桜色のスニーカー。肩からは細いベルトが垂れ下がり、小さなバッグへと繋がっていた。手には黒いコットン生地のMA―1が握られている。走っている間に熱くなって脱いだのだ。
なんとか電車に間に合った。
「ありがとうローギ。ローギは足が速いんだね」
「まあな」
「ローギ、朝聞きそびれちゃったんだけど……」
「似合ってるよ」
「ローギはどうしてあたしと一緒に居てくれるの? フーリに似てるから?」
「はじめはそうだったな」
「でもあたしはフーリじゃないし、その……偽物だよ」
「
肩に手をやると、ゆっくりと
「最初はもしも
「やった! 良かった!」
「あぶねえから」
「ごめん、ローギ」
転びそうになったのがよほど恥ずかしかったのか、彼女の頬は赤く染まっていた。
「ねえ、あたし、ローギのこと好きだよ?」
「ああ……はぁっ!?」
「
「あ、いや、
「ローギは? ローギはあたしのこと好き?」
「いやだからこんなところで聞くんじゃねえよ……!」
乗客は少ないが、ゼロではない。ほとんどが無視を決め込んでいたが、中には二人のやり取りを見て微笑みを向ける者や舌打ちをする者が居た。
「ひどぃい!」
「酷くない! ほら、次で降りるぞ」
駅で
「紫陽花咲いているかな?」
「咲いていると良いな。時期的にはあってるはずなんだが」
前回持ち帰ったパンフレットを見ながら
「そう言えば
「ああ、俺と
「そっか……なんか悪いことしちゃったかな」
「それなんだが、悪いと思うなら全力で楽しんで来い。って命令が下されちまったよ」
「
「今日のお弁当は
「わーい! ウルカとリジンのお弁当楽しみ!」
「逆葬儀の誤解も解けたことだし、これからは俺たちに任せてくれよ」
「それなんだけど、やっぱり僕は僕なりに
「なんで?」
「僕の愛した人は、別にラボの思惑で殺されたわけじゃあないからね。やっぱり
「むぅ……そうか」
「だけど別に、この前みたいに邪魔をしたりはしないよ。逆葬儀屋センターから振られた仕事をこなすだけ」
「わたしが
唐突に
「はあ!?」
「だってもしもわたしが自殺しようとして
「わあー! ローギモテモテだね!」
ニシシと笑う
「いや、笑いごとじゃあねえんだけど」
4人がテーマパークのゲートを通ると、すぐ横に大きなポスターが貼ってあり、
4人は顔を見合わせて、ほがらかに笑い合うと、また歩き始めた。
「良かったね」
「うん! 良かった!」
「これは僕でも灰にはできないね」
「そりゃそうだろうぜ」
そのポスターにはでかでかと『リニューアル工事を実施します』と書いてあった。
どうやらこのテーマパークは生き直すことを決めたらしい。
オーバーデッドと逆葬儀 詩一 @serch
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