両親を亡くし、辺鄙な田舎で叔父さんと二人きりで暮らしていた少年は、いつも行く花畑で一人の少女と出逢う。
魔女に囚われ奪われた身体を取り戻したい少女の願いを叶える為に、少年は旅に出ることを決意するが……。
この物語の主人公は至って平凡な少年です。
けれど、少女と出会い、旅をし、おちゃらけた音楽家との愉快な舌戦。少年をからかう少女とのやりとりや音楽家の男との掛け合いは、読み終えた後に少しの寂しさを持って思い出してしまいます。
たった十日の旅路の中で、少年が出会ったもの、知ったもの、そして決意したもの。
それは、魔女の森に辿り着いてから巻き起こる怒涛の展開から結末に至るまで、少年にとってどれもが不可欠なものだったと感じます。
少年のひたむきさ。
少女の葛藤。
男の親心?
そして、英雄となった兵士の信念。
全てが心に染み入るものでした。
基本的に一人称ですが『登場人物が名前で呼ばれない』というのも、この物語に深みを与えているように思います。