作品解剖 ※閲覧注意※

作家は自作品を解説し過ぎるのは、読み手の解釈を狭めてしまうために世間では御法度とされています。

が、それでも作った側としては作品を細かく読み解いてもらいたいというのが、親心というもの。


故に次ページからは、読者に気にかけてもらいたかった部分の、解答を示していきます。

その前に。この言を聞いて答え合わせの前に自分で調べたいという方は、是非もありません。どうぞページを巻き戻してください。


ではヒントをいくつか。

例えば、作中に出て来る「地名」は全て現実に存在する、とある国の地名に即したモノで、連想ゲーム的に名前をいじったモノになっています。もしそのネタ元に辿りつく事ができれば、「城を追われてからのウィルの動向」や「第二話でのウィルの侵攻ルート」などが、実際の地図上で明記できるはずです。

また、作中の時間軸(年代・月)などもある程度は目星がつけられるつくりになっています。

それを表す描写を見つけられれば。なんか国語の授業を思い出しますね。

他にも、「登場人物の名前の意味」や「映画や小説のオマージュ」について、次ページから解説しています。


この言を聞いて、もう一度読み直すもヨシ。

答えを聞いてから読み直すもヨシ。

読み直さないのも自由ですが、本音を言えば読み返して欲しいのが、正直なトコロ。











          ⁂   ⁂   ⁂











本来のウィルオウウィスプ伝説

「鍛冶屋ウィルの伝説」、「種火のウィル」

昔、「鍛冶屋のウィル」という非常に口が上手く、非常に素行の悪い男がいた。そしてある時、その普段の行いが原因で恨みを買って殺されてしまう。死後ウィルは、「死者の門」まで行き、「聖ペテロ」の前に突き出される。聖ペテロとは、日本で言う閻魔大王のような役割をもった天使で、死者が天国行きか地獄行きか、死者の言い分を聞いて判断する。ウィルは持ち前の口のうまさを発揮して、地獄行きを回避。あまつさえ復活を果たす。しかし生き返ったところで善人になる訳ではなく、相も変わらずの悪行三昧。そして二度目の死を迎えた時、──ここからパターンが異なる。

パターン1。

再び聖ペテロの前に突き出されたウィルへ、聖ペテロは「オマエはせっかく生き返ったのに、あいも変わらずの悪業三昧。さすがにこれ以上は目に余る。オマエの様な奴は地獄ですら生ぬるい。天国でも地獄でもないその狭間で永遠にとどまり続けるがいい!」ウィルは後悔したが後の祭り。天国と地獄の狭間である煉獄に突き落とされてしまう。とぼとぼとくらがりを歩くウィルをみて哀れんだ悪魔は、地獄の猛火の中で燃え盛る石炭を一つ取り出して、ウィルに灯りとして与えた。ウィルは今も煉獄を彷徨い続けている。時折、現世にも現れるが既に死者の身であるウィルに実態は無く、ぼんやりとウィルの持つ明かりが見えるだけ。

パターン2

死後、聖ペテロの前に突き出されたウィルは、今度こそは聖ペテロを騙すことはできず、今度こそ地獄行き。しかし今度は地獄で悪魔を騙し、そこも追放される。その時悪魔が投げつけた石炭を、そのまま灯りとして持っている。天国にも地獄に行けなくなってしまったウィルは腹いせに旅人を迷わせたり、底なし沼に誘い込んだりしている。


これに、「ジャックオランタン」の伝説を足した。

昔、ジャックという非常に口が上手く、非常に素行の悪い男の元に、地獄から悪魔がやってきて、ジャックの魂をとろうとした。しかしジャックは持ち前の達者な口で悪魔を返り討ちにし、向こう十年は自分の魂を取りに来ないように約束させてしまう。そして十年後、再び悪魔がジャックの元を訪れ、魂をとろうとするが、ジャックは再び悪魔をたぶらかし、二度と悪魔が自分の魂をとれないように約束させてしまう。それからジャックは天寿を全うしたが、元来素行が悪かった為、天国には入れてもらえず、しぶしぶ地獄に行くが、例の悪魔に「お前の魂は取らないと約束したから、地獄には入れないよ」と門前払いを喰らってしまう。天国にも地獄に行けないジャックはその間にある煉獄を彷徨う事になったが、あんまり暗いので悪魔に「何か明かりをくれ」と頼んで、地獄で燃える炎の塊を貰う。「せっかくの火が消えては困る」と道端に落ちていたカブをくりぬいてその中に炎を入れて、ジャックはとぼとぼと煉獄へ消えて行った。


「It’s time for a coffin break.」はハロウィンのいわゆるダジャレ。

本来は、「It’s time for a coffee break」で「コーヒー休憩」っていう意味だけど、「コーヒー」を「コフィン(棺桶/埋葬)」にもじって、「お墓(埋葬)の時間ですよ!」っていうブラックジョーク。


ソロモン➡悪魔を使役する王。ソロモン72柱。その図鑑が「ソロモンの書」。それにはいくつか種類/構成/第何部とかがあってその一つが「ゴエティアの書」。「ゴエティア」の別の言い方が「ガイーシャ」。つまり、それを読み解いたウインディは、兼ねてより悪魔の研究をしていた。


ウィルオウウィスプの一族は、みんな、名前のイニシャルがw.wになるようになってる。


新大陸の死者の祭り➡メキシコの「死者の日」、『リメンバーミー』とかの


ファフロツキーズ➡fafrotskies[falls from the skies]怪雨のこと。魚とかカエルが雨のように降ってくる現象➡「その場(空)にあるはずのない物が降ってくる」ことから、この名前に。

本来は「ファフロッキーズ」だが、セカオワのファンクラブの名前が「ファフロツキーズ」で、『RAIN』の歌詞も「ファフロツキーズ」だから、「ツ」が大きい。他にも『深い森』や「太陽が無色透明」➡『青い太陽』などセカオワの楽曲からの引用が多い。なぜなら作者がセカオワのファンだから。


指パッチンで部屋がきれいに➡『メリーポピンズ』


L e e - E n f i e l d➡イギリスのライフル銃


スリエルの指巻き➡スリエルは「サリエル」のこと。大天使。医療に精通しているとされ「癒す者」と言われる。また、力の源が月。


フォリオクエ➡キリスト教の用語。「子からも」という意味のラテン語。物を倍々に増殖させていく事から。


p76:グラウコービス➡ギリシャ神話の女神アテネの使いが白フクロウ。吟遊詩人のホメーロスがアテネの事を「グラコービス・アテーネー」と呼んだ。


大司教ラビ➡ユダヤ教でゴーレム作った人。

呪文:ゴーレムをメインに据えた小説、シンシア・オジック『The Puttermesser Papers』の登場人物たちをランダムに羅列


『赤い竜の王』➡アーサー王伝説


ウィルが試作ゴーレムに読ませた本➡「魔女にたぶらかされて奥さんの言いなりになって主人を殺してその地位に着くお話」、「ラストの森を動かした戦法」➡ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』


魔導具の名前

【奴隷の王冠(コルディセプス・シネンシス)】 ➡ 寄生植物のこと「コルディセプス・シネンシス」は蟻をゾンビにして繁殖する。その際キノコが頭部を突き破って出てくることからそれが冠に見える。

【彷徨う子宮(インヴィディア)】➡彷徨う子宮っていうのはヒステリーが精神病だとわかる以前、子宮の病気でそうなっていると考えられていたことから、その病名的なのが彷徨う子宮。で、それでヒステリーと言えば、痴情のもつれとか修羅場だろうと思ったから、嫉妬を意味するインヴィディア。

【育ち行く万雷(クラドグラム)】➡クラドグラムはダイアグラムの一つ。系統樹を説明するのにつかわれる。指数関数的に増える。雷を表現するのにいいと思って。

【刃毀れ(サメノハ)】➡カボチャの皮は水分を保持する為にめちゃ固く、やわな刃物では逆に刃毀れしてしまう。刃毀れしたギザギザの包丁などが、サメの歯を連想させることから。


V i c k e r s➡イギリスの水冷式の機関銃


大魔法使いアンブロシウス➡マーリンの別名がアンブロシウス・メルリヌス


「小さな紫の花」➡ミヤコワスレ➡花言葉「しばしのお別れ」

古畑任三郎EP24「しばしのお別れ」から。作者は「田村正和」と「三谷幸喜」のファン。


イギリスの春(三月~四月ごろ)を代表する花➡水仙➡ダファデイル。つまり王子が生まれたのは春ごろ。

劇中「王子が生まれて半年を祝うパーティー」が催されるが、王子が生まれたのが三月~四月ごろだとすると、そこから半年後は九月~十月。ウィルの復帰作戦は、その時期と推定され、「姫の100日間の家出」から、ウィルが城を追い出されたのは、少なくとも六、七月以前だと推察できる。

スノーマン➡興行師のこと。エンターテイナー。


火のサソリ➡宮沢賢治『銀河鉄道の夜』蠍の火


猫の名前が「トロイ・メライ」宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』で猫がリクエストしたのがシューマンの「トロイメライ」


ベイリーフ➡月桂樹の事、月桂樹はアポロンが頭に巻いてる植物。




登場人物の名前の由来


王族の名前の付け方 : 名前=その人物を象徴する言葉・父・母・家名


エレオノーラ=ハイラント・リチャード・メアリー・オブ・アンブロシウス

[Eleonor=Heiland Richard Mary of-Ambrosius]

「思いやり」=「救世主」・父・母・家名(マーリンの別名)


リチャード=バシレウス・ルイス・レオンティーナ・オブ・アンブロシウス

[Richard=Basiléus Lewis Leontina of- Ambrosius]

「支配者」=「王」・英国生まれの父・伊国人の女性・家名


ジョン=ソーマ・ルイス・レオンティーナ・オブ・アンブロシウス

[John=soma Lewis Leontina of- Ambrosius]

王の名前の由来がロビンフッドのリチャード王とジョン王子だから=酒の神ソーマ・父・母・家名


マイケル=エルケーニッヒ・リチャード・メアリー・オブ・アンブロシウス

[Michael=Erlkönig Richard Mary of-Ambrosius]

一般的な英国男性名=オペラ「魔王」で息子が攫われるからそっから、魔王のドイツ語版・父・母・家名

王様と叔父さんの名前は『ロビンフッド』のプリンスジョンとリチャード王から。


サー・アレクサンドラ・ユスティアス

[Sir Alexandra justitias]

Alexander➡守護者の意 justitias➡正義


アルベルト・A・アエイバロン

[Albert A Aeibaron]

アエイバロン[Aeibaron]➡Ἀειβάλλων アポロンの別名


SG-62-I3

SGは「スケープゴート」の頭文字、62はウィルが62歳の時作った。インプルーブ(改良型)3号

SG-47-P1

スケープゴート。62歳製、プロトタイプ一号


グレムリン・スパンデュール➡スパンデュールはグレムリンの種類の一つ。通常個体より、より高高度を飛行する飛行機内に出現する。




地名


イングリース➡イングリッシュ➡英語 英語の国➡英国➡イギリス


お城(アンブロシウス城/ビスケットの缶)➡ウィンザー城 現王族の家名が「アンブロシウス」だから

首都(ランドニオン/ウイスキーの瓶)➡ロンドン  ランドニオン塔➡ロンドン塔  「ロンドン」のもじり

隠れ家(ファフロツキーズの眠る場所/フィッシュ&チップス)➡ストーンヘンジ  石の魚だから


タメシス河➡テムズ川

ローマ人は「テムズ川[River Thames]」を[Tamesis]と書いたから、それをローマ字読みして


跳開橋(ルーク・ブリッジ)➡ルークはチェスの塔、塔はタワー➡タワー・ブリッジ


ビック・ベル➡ビックベン 


ストロベリー・フィールド港➡イギリスのロックバンド「ビートルズ」の『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』から。

ジョン・レノンが過ごした孤児院があるのがリヴァプールという港町で、孤児院の名前が「ストロベリー・フィールド」


王城を出発し貯水池群を抜け➡貯水池群➡レイズベリー


王国の北側にある小さな島➡スコットランドのハイランド地方、ヘブリディーズ諸島のこと。ここは鬼火伝説(スパンキー)リンクボーイの伝承がある。


世界の果てのような谷 ➡ World's End, Offa's Dyke[ワールズ・エンド, オファズ・ダイク] リヴァプールの南にある谷。


ワーズワス橋➡ウェストミンスター橋。

ウィリアム・ワーズワースが「ウェストミンスター橋の上で」という詩を書いてる。


三羽の烏大聖堂➡カンタベリー大聖堂。カンタベリー大聖堂があるイングランド南東部ケント州のカンタベリー市の市章に三羽のベニハシガラスが描かれてる。


インバネス湖➡ネス湖。インバネスはネス湖の近くの地名。イギリスにフィヨルドはない。




地図はTwitterにて

https://twitter.com/koitiro_morioka/status/1638443796404002816?s=20



他にもTwitterでは、本作の広報用に作った【よこざん】先生のイラストを使用した「キャラクター紹介」や、キャラクターデザインのラフ画などを掲載中。一見のカチアリっ!是非ともご覧になってくださいね。

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長編『元は宮廷魔術師、いま国賊。どうにかお城に帰りたい』 2023.03/09 森岡幸一郎 @yamori966

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