自分という人間を一つの看板で表すとしたら、そこに何を描くだろう

生業という言葉がある。生きるための仕事を表す語です。
どうやって身を立てるのか、生業は人それぞれです。天職が見つかる人もいる。家庭の事情などから予め決まった仕事をする人もいる。
そして本作の主人公・譲さんのように、自分の居場所やスタンスを見失い、進むべき道も分からずに迷ってしまう人もいます。

譲さんの前職に絡めた『看板』という概念が、本作のテーマの根幹をついています。
自分という人間を他者に知らせるためのもの。当然、自分が自身のことをしっかり把握していなければなりません。
譲さんに加え、このみちゃん、海太くんというメインの三者が三様に、悩みながら己の道を見出していきます。

まさにど真ん中のヒューマンドラマ。
きっと多くの人が一度は感じたことのある迷いや悩みが非常に丁寧に綴られており、事あるごとに深い共感を覚えました。
そしてタグにもある『グッドエンド』の文字に、読了後すごく納得しました。
譲さんにとってベストではないかもしれない。手放しでハッピーとも言い切れない。
だけど紛れもなく『グッド』。彼が見つけた人生の落としどころに、とてもリアリティがありました。
ちゃんと前を向きたくなる、清々しい読後感の物語でした!

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