37 異世界ジャンルのある限り、僕の仕事はなくならない



「はい、転生の申請ですね。お預かりします」



 僕が何をしようとしまいと、朝は来るし夜もくる。そうすると仕事とかいうやつもどうしたってやってくる。楽しかった思い出も辛かった記憶もぜんぶまるっと横に置いといて、やらなくちゃいけない事をやっていくのが生活ってやつ。生きる活動とかいう割に僕はもう死んでるんだけどね。

 そんなこんなで、ハイ、今日も今日とてお仕事です~。

 いやぁ、相変わらず申請が多いこと。

 

「お、ちゃんとしてる」


 ぱっと見、不備なさそう。期限までも十分ある。うんうん、きちんとしてる世界管理って素晴らしい。

 えーと、なになに……。


「地球以外だったら貰おっか?」

「相変わらず大人気ですものね、日本は」


 そう。転生と転移は相も変わらず地球、それも日本の人材が大人気。あっちの世界もこっちの世界も、日本から人を引き抜こうとしている。このままだとマジで日本から人がいなくなっちゃうよぉ。

 あとこの異世界課で日本担当してる僕の仕事量が単純に多いからやめてほしい。


「ん~……これ、僕が貰っていい?」

「何かあったか?」

「ふふ。みてこれ」


 転生後の予定は 

 性別「男性」

 種族「人間」

 魔力「有」

 職業「農夫」

 転生理由「魔法による農作物の育成、収穫、加工技術の考案と確立」

 求める人物「魔法運用に長けている人物が望ましい」



「ああ、そういう事ですの」

「確かに良さそうだな」

「管理担当の人もしっかりしてそうだったよね」

「念のため内線で詳細聞いとこっかな」 


 プラスの条件、忙しすぎないこと。それだけ確認できればもうオッケー。

 転生元の人物の詳細を書き込んで、資料添付して僕の作業はおしまい。あとはチーフと課長がチェックして承認。それから転生先担当者の確認と承認、決裁が終われば彼の魂は次の世界に進んでいく。

 まぁまぁステップがあるな……。でもマ、そんなのすぐだよ。なんてったって、期限は五営業日なんだから。


「ねぇコータくん。その世界って、時間設定は……ああ、うん。早くていいわね」

「え、何がです?」

「まだナイショだよぉ」






 数年後。

 クリーチャーを課長に据えた、女神と元聖女と元勇者と元悪役令嬢と元社畜の所属する転生転移の見本市みたいな部署に、新入社員として元魔王が配属される未来があるなんて。

 見本市というより、もはや煮凝りでは。







■□□■□□■


これにて完結、業務終了。

お疲れ様でした。


ここまでお付き合い頂きまして本当にありがとうございました。

ついでにもうちょっと下にスクロールのうえ、☆をポチポチ押してもらえると作者の寿命が伸びるような気がします。厚かましい。


それでは、これからの季節とっても暑くなりますので、また、突然の転生・転移の可能性に備えお体ご自愛ください。


また、各世界を管理されている皆様におかれましては異世界への転生・転移の際は期日と書類不備にお気を付けのうえ、お早めに異世界課へ申請書類の提出をお願いいたします。




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世界管理協会 異世界課 野々宮友祐 @i4tel8

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