夢のあとさき
にわ冬莉
第1話
大学受験への道のりはかくも厳しく、戦いは常に孤独だ。
いい加減、勉強に飽きていた俺は、携帯を片手に外に出た。
丑三つ時、という言葉は、今や死語かもしれないが、こうして誰も歩いていない住宅街を
コンビニまで行けばそこにはありふれた日常しかなく、今が夜中であることの
俺は少し足を延ばして、公園まで行ってみることにした。
公園の入口付近には三匹の猫。
ああ、これがかの有名な、猫の集会か。
なんて思っていると、ひときわ大きな体のブチ猫が俺の方を見た。
そして、あろうことか
「いいとこに来たな、あんた」
と言ったのだ。
まさか。
そんなはずはない、と脳内で全否定していたが、
「おい、あんただよ、人間」
もう一度、話し掛けられる。
「嘘だろ?」
声に出してみた。
しかし、俺の動揺などお構いなしに、猫は話を続けた。
「この先で物騒なもん振り回してるやつがいて困ってんだ。何とかしてくれんか?」
「は? 何で?」
「いいから行けって!」
狐につままれるってこういうことだな。
いや、猫だけど。
結局俺は猫に急き立てられ、公園の奥へと歩いた。
そこには勇者のコスプレをした少年が長い剣を振るっている。確かにこれは、危ない。
「……じゃなくて!」
つい、叫んでしまう。
その声に反応し、少年が俺を見た。
「勇者になるための修行は厳しいですよ!」
聞いてもいないのに答えをくれる。しかも
「でもそれ、危ないから…、」
俺は素直に交渉を始めた。
「それなら、あなたの力を俺に分けてくれませんか?」
意味がわからない。
意味は分からないが、少年は凛々しい顔で俺の方へやってくると、剣先を俺の頭に向けた。
切られて死ぬのか?
切先に、尻が痒くなったところで目が覚める。
ああ、そうか。
俺は携帯を手にすると、外へ出た。
公園の入口付近には三匹の猫。
え?
夢のあとさき にわ冬莉 @niwa-touri
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