深夜に散歩をしたばかりに

龍神雲

深夜に散歩をしたばかりに

 お題発表時間になり、カクヨム公式のお題を早速チェックした。


「次のお題は、深夜の散歩で起きた出来事か」


 だが何も思い浮かばなかった。そもそも深夜に散歩をしたことがないからだ。しかしそこは想像で書けばいい。だが、5分経っても、10分経っても、思い浮かぶ物はなく、ただ時間だけが過ぎた。このままでは不味い。提出期限は明後日だ。取り敢えず珈琲を飲み、瞑想し、心を落ち着かせる。


そして──


「ん……?」


 珈琲を飲み瞑想した後の記憶がなく、はたとする。俺は一体、何をしてたんだ?気付けば室内は真っ暗だった。デスクに置いてあるスマホを取り、時刻を確認する。見れば夜の7時を回っていた。珈琲を飲み、瞑想をする内にそのまま熟睡してしまったのだ。あれから大分経ったが何も思い浮かんでなかった。提出期限に間に合うだろうか──。急いでPCを立ち上げるが、文字は1字も打てず時間が過ぎた。


 (不味いな……)


 KAC2023は皆勤を目標に参加したのだ。そして時刻は8時を回る。1時間が経過するも、俺の手は完全に止まったままだった。


 やばい、どうする?お題は、深夜の散歩で起きた出来事──そうだ!


 閃き、玄関に向かった。考えても浮かばないなら実際に散歩すればいい。今は8時だが、深夜と変わらない暗さだ。きっとこの時間でも何か起こるだろう。俺は早速、家を飛び出した。


 夜の8時、辺りはそれなりに暗くひっそりとしていた。そして住宅街を歩く中、電柱の下に暑くもないのに長いマフラーを首に巻いた、怪しい女性が立っていた。もしかしたら口裂け女かもしれない。少し怖いがカクヨミ皆勤と小説のネタとして、その女に近付き声をかけることにした。


 そして翌日、


『深夜1時頃、住宅街で男性の遺体が発見されました。首が切断され……』


 ニュースが流れ、カクヨムでは【深夜に散歩をしたばかりに】という作者不明の小説が投稿されていた──

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