突然の「不正出血」

大田康湖

突然の「不正出血」

 朝起きて、いつものようにトイレに入った私は驚いた。下着に血が付いていたのだ。久しぶり、そして二度と味わうことはないだろうと思っていた出来事に、私の頭はぐちゃぐちゃになった。

(閉経してから一年以上経つのに、生理が復活するなんて。それとも「不正出血」ってやつ?)

 私の頭に婦人科でよく見る単語が思い浮かぶ。しかし、そのまま呆然としている時間はない。出勤時間は刻々と迫っているのだ。

(早く着替えを探さないと)

 幸い生理用のナプキンは使いかけのが残っている。私は生理用の下着を探そうとタンスの引き出しをぐちゃぐちゃにしながら探したが、見つからない。

(そうだ、閉経したからもう使わないだろうと思って処分したんだった)

私は自分のうかつさに頭を抱えながら、とりあえず新しい下着にナプキンを付けて出勤した。


 通勤中、スマートフォンで「不正出血」を調べると、『閉経後の不正出血は子宮のガンの可能性もあるので病院で検査を受けるように』と出てくる。私は若い頃子宮筋腫になり、産婦人科で治療していたが、悪化の恐れは少ないということで経過観察となり、ここ数年は人間ドックで子宮ガンの検査を受ける程度だった。母親が子宮筋腫で手術を受けていることもあり、心配は早めに解決したい。私は以前検査を受けた産婦人科病院に予約の電話を入れた。


 その日一日、生理のように不正出血は続いていた。

 退社後、産婦人科病院で子宮ガンの検査のため、子宮内部を綿棒で触って試料を採取する細胞診を受けた。体内に異物が入る感覚にはいつまでたっても慣れず、苦手な検査だ。医者は「辛いのはみんな同じだから」と言うが慰めにはならない。しかし、自分の命がかかっているので仕方なく我慢した。


 子宮ガン検査の結果は一週間後に出るというので、不正出血についてはそれまで様子をみることになった。帰宅したら生理用の下着を注文しないといけない。

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