ルービックキューブ・インポッシブル
秋待諷月
ルービックキューブ・インポッシブル
――先輩、先輩。
――うん? どうした?
――先輩はルービックキューブが特技だって聞いたんすけど、本当っすか?
――おう、得意得意。公式大会に出場したこともあるぞ。
――まじすか。俺、ルービックキューブ持ってるんで、ちょっとやって見せてくださいよ。
――ああ、いいぞ。貸してみろ。
――ま、徹底的にぐちゃぐちゃにしてあるんで、いくら先輩でも、六面揃えるのは不可能だと思いますけどね。
――生意気なやつだな。舐めるなよ。それくらい、三十秒もあれば楽勝だ。
――へぇ? じゃあ、もし先輩が三十秒以内に六面完璧に揃えられたら、焼き肉奢りますよ。
――ほほう、言ったな? それなら、もし三十秒以内に揃えられなかったら和牛ステーキ奢ってやるよ。
――言いましたね? 本当に、全面全色ぐちゃぐちゃですからね。あとで後悔しても遅いっすよ。
――男に二言は無い。この勝負乗った。
――そうこなくちゃ。
――ちなみに、接着剤で固めてあって回せない、なんて卑怯な真似はしてないだろうな。
――そんなこと、するわけないじゃないっすか。ほら、見てください、ちゃんとスムーズに動かせるでしょ?
――確かに。よし、始めるか。
――あ、タイム計るんで、俺が『始め』って言うまで、目は閉じててくださいよ。
――なんだ、ここにきて恐れをなしたか? ほら、閉じたぞ。その『徹底的にぐちゃぐちゃなキューブ』とやらを寄越せ。
――はーい。それじゃ、いきますよ。三、二、一……始め!
――よっしゃ!
――……五秒経過。
――……ん?
――十秒経過。
――おかしいな……?
――十五秒経過。ほらほら、手が止まってますよ。
――そんな馬鹿な、なんで……。
――言ったでしょう、不可能だって。白・黄・青・赤・緑・橙・黒を徹底的にぐちゃぐちゃにしてあるんですから。
――いやでも……お前、今、なんて言った?
――徹底的にぐちゃぐちゃにしてあるんですから。七色を。
Fin.
ルービックキューブ・インポッシブル 秋待諷月 @akimachi_f
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます