第2話 沼地

南でカンスト・スライムが出たという噂を聞いた。

すぐに荷物を持って行ってみると南の街はにぎわっていた。

宿屋にも空きが無く俺は下宿に金を払って宿泊した。


「ああ、スライムなら街の西の沼地にいるがね。」


そう老人の情報を得て俺はさっそくスライム狩りに出た。

同じく狩りに来ている冒険者も見えたが皆、黙々と狩っている。


日が暮れて街に帰ると戦士のパーティが西の山のオーク討伐に出発していた。

この街では冒険者は日が暮れてから大きな討伐に出るのが慣例だ。

そのパーティの中で若くて目立つ戦士がいる。

俺は老人にあの戦士は誰だいと聞いてみた。


「あの戦士はロック。カンスト戦士さ。レベルがカンストしている。

あの若い戦士ロックがこの街の守護者だがね。」


聞けばこの街はひとりのカンスト戦士ロックに守られている。

外部からモンスターが攻めてきた時もカンスト戦士がいれば大丈夫だ。

戦士ロックもまたカンスト・スライムを倒して無限の経験値を得たという。


「普段はカンスト戦士はモンスター討伐などに出ないがね。

今回は街の有力者の息子の仇討だ。その息子が二週間前にオークに殺されている。」


なるほどな。そのオークがいくら強力でもカンスト戦士が戦えば結果は見えている。

俺は翌日からもスライム狩りをして数日が過ぎた。


「戦士さまのパーティが帰って来たぞ。」


俺は外が騒がしくなってきたので夜中だが下宿のベッドから飛び起きた。

街の門まで走っていくとパーティが見えた。

賢者、僧侶がいた。戦士ロックはいない。


「カンストじゃ。カンスト・スライムを倒したんじゃ。」


誰かが叫んで群衆がざわついた。

たしかにパーティの雰囲気ががらりと変わっている。

賢者、僧侶がみなぎっている。

あふれている。

満ちている。

光がもれている。

輝いている。

パーティ全員がカンストしている。

賢者が事情を説明していた。


「オークは討伐できました。しかし帰路で。

沼地でカンスト・スライムを倒してしまって。

逃げるときに沼地に足を取られて。

倒れたところに隠れていたカンスト・スライムがいて。

不注意で意図せず倒してしまった。

それで

戦士ロックは

連れていかれてしまった。

彼はまだ若いのに。

申し訳ない。」


街の門には恐ろしいレリーフが彫られている。

外敵から街を守る恐ろしい神々だ。

聞けば昔は街を襲った盗賊集団を倒して門につるしていたらしい。

死んだ盗賊の恐ろしい形相が目をむいて叫んでいた。








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カンスト・スライムを追え おてて @hand

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