ぬいぐるみの国

余記

美羽ちゃんのおもちゃ箱

あるところに、ぬいぐるみの国がありました。

まぁ、国と言っても中に住んでいる、ぬいぐるみたちが国と言っているだけで外から見たら美羽ちゃんのおもちゃ箱なんですけどね。


それはまぁ、ともかくとして。


美羽ちゃん、という名前の、とある女の子の持っているおもちゃ箱。

その中には、さまざまな種類の、いろいろなぬいぐるみ達が住んでいました。

ぞうさん、たぬきくん、きつねちゃん、他には男の子、女の子、更にはよくわからないなしの妖精や角の生えた男の子のような、変な、いえ、可愛らしいぬいぐるみたち。


彼らの関心はただひとつ。


この国の王女さまである美羽ちゃんに、どうすればより多くかまってもらえるか?より長い時間一緒に遊んでもらうか?という事でした。


「最近、俺で遊んでくれる事が少なくなった気がするんだよな」

そんな事を話すのは、この中で一番大きな体を持つ、恐竜のぬいぐるみのガオ君でした。

3年前の美羽ちゃんのお誕生日にプレゼントとしてやってきた子で、初めの頃は美羽ちゃんも抱きしめて寝るくらいにお気に入りの子だったはずなのです。

それがいつしか、押し入れの隅に押しやられてしまって、うっすらとほこりがかぶるようになってしまいました。

ちなみに、その頃からぬいぐるみの国は押し入れの中一帯に領土を広げています。


そのガオ君の悩みに答えるのは、賢者の噂がある、フクロウのぬいぐるみのホー君。

「やはり、美羽ちゃんは女の子だから、同じ女の子である方が一緒に遊んでくれるかもしれん」

幸い、ガオ君は性別の無い人形だったので、性自認を女の子にする事に問題はありませんでした。


こうして満を持して美羽ちゃんと出会った結果

「あら~ん?美羽ちゃん、今日は遊んでくれないの~?」

「ガオ君、キモい」

ガオ君は星になりました。


そんなガオ君の事はおいといて。


他のぬいぐるみたちは、性自認を女の子にする事で以前より美羽ちゃんにかまってもらえるようにはなったのですが、やはりというか、美羽ちゃんが遊んでくれる回数には差があったのです。


「平等に遊んで貰えるように要求する!」

ぬいぐるみたちの間に、不公平感が高まってきました。


しかし、どうしたらよいものか?

賢者の噂のあるホー君にもなかなかいいアイディアは浮かびません。

「うーん。元々、違うものに対して平等に、というは無理があるのでは無いだろうか?」

ぬいぐるみたちは、大きい子もいれば小さい子もいます。

まるっこくて愛嬌のある子もいれば、細長くてひょうきんな子もいます。

もともと、これらすべてを含めて平等に、という事に無理があったのです。


「みんな、同じ見た目ならば平等になるかな?」

ふと、みんなを見回すと今までの間にほつれてしまったり、破れて中の綿がはみ出ている子たちもいます。

そんな彼らを見ているうちに、ピーン!と閃いた事があったのです。

丁度、ネットで「魔改造」されたプラモデルやぬいぐるみたちを見ていたせいかもしれません。


こうして、ぬいぐるみたちは魔改造されてほぼ見た目が同じになりました。

ぞうさんの鼻はもげて、他の子たちと同じように短くなりました。

まぁるい見た目のなしの妖精さんは、長い脚が生えて、すらりとした見た目に。

たぬきさんときつねさんの、ふんわりモフモフとしたしっぽは取り外されて、他の子たちの材料に。

「これで、みんな平等に遊んでもらえるね!」

と、ホー君はいいました。

そして、美羽ちゃんが来るのを、いまかいまかと待ち構えていたのです。


ちなみに、美羽ちゃんはもう、ぬいぐるみで遊ぶような歳は卒業していました。


「美羽~。押し入れの、ぬいぐるみたちはどうするの?」

「あ、あれはもうボロボロだから捨てちゃって~」


めでたしめでたし。

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ぬいぐるみの国 余記 @yookee

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