あとがき
今回はDesperate - Golden 72 Hoursをお読みくださり、ありがとうございました。自然災害をホラーに仕立てた本作のコンセプトによる恐怖体験、お楽しみいただけましたでしょうか。
本作は、凡そ1か月前にトルコ・シリア国境周辺で発生したマグニチュード7.8にも及ぶ規模の大型地震災害に着想を得て、トルコで死没された4万5千人以上の人々、シリアで死没された約6千人の人々に哀悼の意を示すと共に、地震という自然災害の恐怖を今一度皆さんにお伝えしたいと考え、執筆するに至ったものです。
災害大国として多くの地震を経験している我が国・日本と同じく、地震が多いトルコでも負傷者が10万人の大台を突破し、16万棟の建物が倒壊・損傷。数百万人が住処を失ってしまったと推定されている近代史上最悪とも称される被害状況に、僕はただただ愕然とするばかりです。また、内戦下のシリアにおいては被害の全容を把握することすら困難な状況にあると言います。表現者として少しでも啓発活動に貢献し、今後の災害復興に向けて募金や援助をしてくれる人を増やす一助となれば幸いです。
主題ともなったGolden 72 Hoursとは、「72時間の壁」とも称されるように人間が水分なしで生き延びられる限界がおおよそ72時間であるため、緊急災害人命救助の現場においてはなるべく早急な対応を講じるようにと作られた、災害大国・日本発の造語だそうです。
しかしながら、実際に過去の災害に関する研究事例においては被救援者の生存率と72時間というタイムリミットの相関性は低く、科学的実証が成されていないというのが本当のところです。では何故72時間が生存の限界点として人々に観念されるようになったのかというところですが、これはアメリカにおけるサバイバルの鉄則とされている"The rule of threes"に由来するものと考えられており、先述の通り水分補給なしでの生存時間が3日間、すなわち72時間だからという原則を日本人が防災概念としてなぞらえ、海外にも"Golden 72 Hours Rule"として広まっていったという経緯があるようです。
この72時間という防災概念は、人々に国際緊急人道支援の重要性を強く認識させるという点で一応のメリットも存在する一方で、72時間経過後の救出活動が著しく停滞しかねないという重大なデメリットもあります。ただでさえ倒壊した建物に押し潰されたり、本作のようにエレベーターなどの閉所から身動きが取れなくなったりした人々の精神状態を思えば一刻も早くの救助が不可欠であり、場合によっては生死にかかわる怪我や病気に悩まされているかもしれないのに、科学的証明が成されていない時間的な概念を災害救助の現場に持ち込むというのは、如何なものなのでしょうかね。
我が国・日本でも東日本大震災以降、南海トラフ巨大地震の発生などが懸念され続けていますが、今はトルコ・シリアにて発生後1か月が経過した地震の被害者が1人でも多く救助されること、そして亡くなってしまった方々のご冥福を祈ってやみません。
Desperate yokamite @Phantasmagoria01
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