記憶喪失の青年、足桐蒼起。
魔眼を持つ少女、秘美弥凍。
目が見えない凍にとって蒼起は杖であり、記憶を失う前の蒼起を知っている凍は彼にとって杖である。
お互いがお互いになくてはならない存在。恋人ともバディともまた違う不思議な絆で結ばれた二人が、魔眼が関係する殺人事件の捜査協力を受けたところから物語は始まる。そして、舞台は山奥に潜む「夢占いの館」へ――。
事件が起きて、謎を解く。この基本的な主軸をどう彩っていくかがミステリー小説を書く上での醍醐味かと思います。作者様はそこに「魔眼」というファンタジー要素を選ばれました。
秘見弥という一族に伝わる、人の心に干渉する力を持つ不思議な瞳。凍の場合は嘘や隠し事を見抜ける。そんな人智を越えた力を使ってチートで解決……というわけではなく。推理をするのは凍の杖である蒼起。そして彼から得た情報で真相を語るのは凍のもう一つの眼。ラストまで二人は表裏一体でした。それが、このミステリーをより奥深いものにしてくれました。
タイトルにある二重密室に挑む二人の賢明な推理と、「ダブルロック」がかけられた様々な真実を目の当たりにして、きっと圧倒されるでしょう。
緻密な文章力で綴られる記憶と視界が交差するライトミステリーに、あなたも没入してみませんか?
主人公は記憶喪失の青年、蒼起。
彼は、魔眼を持つ少女の凍、瀬月らと共に足桐医院で暮らしているが、ある日、警視庁に務める警部である八重霧に頼まれ、蒼起と凍はある高級レストランを訪れる。
そこで起こった事件をきっかけに、二人は「夢占いの館」と呼ばれる山奥の洋館へと招待された。
眠っている間に覗き見るという夢占いを行っている最中に起こった密室殺人事件により、凍は容疑者として疑われてしまう。
何故殺人は行われなければならなかったのか。
その眼が開かれる時、真実へと至る推理は始まります。
不穏な空気感が漂いながらも語り部の青年の静かな語り口が心地よく、気がついた時には夢中になって読み進めてしまいます。
登場人物も個性豊かで、それぞれの関係性にも目を惹かれます。
話の真相に辿り着いた時、考えさせられる二重の意味には、何度もなるほどと思わされました。
本格的なミステリーと魔眼を組み合わせてあり、ミステリーに慣れていない方も楽しめる、おすすめのお話です!