風評被害
「いい家だねー。なんか落ち着く感じがする」
「そ、そうかな。普通の家だと思うけど」
「ボロいよー」
お、おお、落ち着け俺!女子が、三枝さんが家に来ているからって動揺しすぎるなよっ!
「よし!じゃあ私は掃除機かけるね!」
「あ、じゃあ俺は幸春を風呂に入れてきます」
「えー!まだ外で遊びたいー」
「あー……あれだ。風呂の中でアイス食べようなっ?だから早くその泥を落とそう」
「分かったー!」
そして、俺は泥まみれになった幸春を連れて風呂場へ向かい、三枝さんは掃除機を取り出すのだった……どうしてこうなった!?
△▼△▼△
「天宮君?」
「三枝さん?」
俺は幸春のおっ○い発言した相手が三枝さんだということに気づき……その影響力を想像した俺は絶望した。
【想像】
『ねぇねぇ、きいた?昨日楓がおっ○い触られたらしいよ』
『えー!?痴漢!?』
『なんかちっちゃい子供だっていってた』
『なーんだ。子供かぁ』
『でも、その子供って天宮の弟らしいよ』
『え、まじ?』
『しかもその時近くにいたんだって』
『うわー最低じゃん……てゆーか天宮がやらせたんじゃね?』
『確かに普通子供とはいえそんなこと言わないもんね』
『天宮ってそんなやつだったんだね』
『私近づかないようにしよー』
【想像終了】
「社会的制裁だけは!それだけはどうか勘弁してください!お願いします!!!」
「え!?社会制裁!?」
「俺も青い春を、青春を送りたいんです!」
「う、うん?」
「なので、天宮に胸触られたー!って吹聴しないでほしいんです!」
「しないよっ!?」
しないよっ!→公にしない→示談、というわけか……いや、それで済ませてもらえるだけでも感謝せねば。
「ありがとうございます」
「うん。別にそんな気にしてないから――」
「それでいくら出せば良いでしょうか!!?」
「なんで!?」
なんでって……そりゃ示談なんだからお金は払わないと。
「今手持ちは、2000円くらいしかないんですが……そうだ相場を今調べますね」
「だから払わなくていい――」
「50万――っ!?流石にこんな金額は……それにこんな馬鹿げたことで母さんにお金を出させるわけにも……!」
「だから払わなくていいって――」
「そうだっ!50万!50万円分返し終わるまでなんでもいうこと聞きますので!分割払いでお願いできませんかっ!?」
「本当に話を聞いてっ!?」
クッ……これでもダメかっ!一体どうすれば……考えろ、考えるんだっ!
△▼△▼△
「50万――っ!?流石にこんな金額は……それにこんな馬鹿げたことで母さんお金を出させるわけにも……!」
目の前で、普通の高校生が絶対に口走らないことを口走っている同級生を見て私は困惑しまくっていた。
「そうだっ!50万!50万円分返し終わるまでなんでもいうこと聞きますので!分割払いでお願いできませんかっ!?」
「本当に話を聞いてっ!?」
(なんで?なんでそうなるの!?私お金払えなんて一言も言ってないよっ!?)
そうやって混乱の極みにあった私の脳は、一周回って正常になり……周りの声を拾い上げる。
「ねぇ、あの男の子どうしたの?」
「なんか弟があの可愛い子の胸を触っちゃったみたいなのよ」
「あらそうなの。でもあの子6っつくらいかしら?それなら許してあげてもいいと思うんだけど……」
「本当にねぇ……あの高校生の子が可哀想だわぁ」
「友達と遊びたい盛りだろうに弟の面倒を見てるいい子でしょう?そんな子にお金を請求するなんて……見た目は当てにならないわねぇ」
(ちょ、ちょっと待って!?私の風評被害がっ!?私そんな酷いことしないよっ!)
それを聞いた私はさらなる大混乱に落ち入り……そこに追撃が飛んできた。
「ぷはっ……にいちゃん。ボク悪いことしちゃった?」
「ん?……いや、幸春はちょっと悪いことしちゃっただけだ。だから気にしないでいいんだぞ?」
「でも、お金払わなきゃなんでしょ?ボクもお兄ちゃんと一緒に働くよ?」
「幸春――!」
そしてそれを聞いていたマダム達が、
「う、うぅぅ……なんていい子なの」
「私ちょっとだけだけどお小遣いあげてくるわ」
「待って、その前にあの女の子を説得よ。なんとか謝罪だけで終わらせないと」
「私の義兄さんが弁護士さんなの。ちょっと聞いてみるわ」
そして、それを聞いた楓は。
(ちょ、ちょっと待って!?なんかすごいことになりかけてない!?あれ?というかこのままじゃ私かなりの悪者にされちゃう?……と、とりあえず、ここから離れないと!?)
「あの!先ほどの条件でなんとかならないでしょうか!?」
「それで良いから、とりあえずついてきてっ!!!」
そう言って私は、天宮くんの手を引いて走りだしたのだった。
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イクメン高校生の子育て(弟)+恋愛(こっちメイン)奮闘記!? 晶洞 晶 @idukisouma
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