海水浴
二〇二〇年七月二十三日。午前八時十分。
桃介、林蔵、徳蔵の三人が、待ち合わせ場所の
「皆さまお待ちかね、ひなまつりとのコラボ配信! 待ち合わせ時刻は、一時間後の九時。<彼女>が現れたら、配信外の様子をこっそり観察して流します。今気になるのは、本当に来るのか。遅刻してくるのか。それと、配信時のキャラは作り物なのか……ネット上に流れてる噂の真偽も、確認していこうと思う。知りたいことがある人はコメントよろしく! もうすぐ待ち合わせ場所に着きま……」
<彼女>は既に居て、
桃介
「おい……待ち合わせ時刻は一時間も
立ったり座ったり、時間を確認したり、水筒の飲み物を飲んだりを繰り返す<彼女>の様子は、緊張してそわそわしているのだと一目瞭然。
視界に入る人の中で、ダントツで目を惹く容姿。何度もナンパされ、その度に断っている様子が、見てわかる。
待ち合わせ十分前。合流を
桃介にとって、初めての外配信。予備電池を持ってきたが、どのくらい持つのか不明。念のため温存しておきたい。
「これから合流します。<彼女>の憧れの人は、まだ来ていないので、気になるとは思いますが、電車移動をするので一旦配信を切ります。海に到着次第、配信を再開します」
手を振りながら<彼女>に近寄る。
「今日はよろしゅう
先に挨拶したのは<彼女>。
桃介が手を上げると、<彼女>が耳打ちする。
「うちが配信してること、黙っといてください。配信に利用するため、呼んだと思われたない」
憧れの人から、そう思われたくない気持ちは、桃介にも理解出来る。
切実な願いだから、見返りを要求すれば呑んでくれそう。
<彼女>を困らせてみようと、耳打ちし返す。
「おっぱいぼいんぼいんまつりを、生で見たいです」
一時間程電車に揺られ、
「飲み物を買ってくるので、場所取りをお願いします。祭さんは、持つのを手伝ってください」
桃介は<彼女>の手を握り、連れ出す。
飲み物を買った後、周りをキョロキョロと見回す<彼女>。
「誰もいひんとこ、あれへんなあ」
<彼女>は人前で、おっぱいぼいんぼいんまつりを見せるのは、恥ずかしいといい、誰も居なそうな場所を探している。
海水浴場で、そんな場所が簡単に見つかるはずがない。
困っている<彼女>の、表情や仕草が可愛らしい。桃介は、<彼女>を独り占め出来ただけで満足している。
至福のひとときを、邪魔してくるスマホのバイブ。
「さっきから鳴りっぱなしやな。何かあったんちゃう?」
見なくても、通知が大量に届いてることはわかる。邪魔だと感じる程に、鳴り続いているのだから<彼女>が気にするのも当然。
(何かあったのかもしれない。見てみよう)
<彼女>が横からスマホの画面を覗き込む。
桃介は、送られてきたURLを開く。動画の被写体は<彼女>の憧れの人。
「何を配信してん!? はよ戻ろ!」
急いで元居た場所へ戻り、付近を探す。
砂浜で林蔵と徳蔵が四つん這いになり、<彼女>の憧れの人に踏まれているのを見付ける。
「え……どういう状況なん!? 何があったん?」
先に疑問を呈したのは<彼女>。
「女王様の逆鱗に触れてしまったので、罰を受けています」
徳蔵は、踏まれながら撮影し、生配信している。
対応を間違えれば逮捕される。十八歳以上と未満者の間には、法律の壁がある。年齢確認はしていないけど、二人とも未成年。高校生だろう。
(徳蔵……何してんだよ。終わった……)
「それは大変やな! ようわからんけど、連帯責任なんやな? わかった。うちも踏んだって」
<彼女>も四つん這いになる。
(憧れてる人に、踏んでくれと要求するなんて、どんな魂胆があるんだ……)
桃介は、目の保養にと<彼女>の尻をじっと見つめる。
<彼女>は視線を感じたのか、振り向いてすぐ目を逸らす。
「そないに見んとって。恥ずかしい。連帯責任やさかい、
桃介は、<彼女>に促されるまま四つん這いになる。
福澤諭吉の娘婿と同姓同名の配信者 はゆ @33hayuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。福澤諭吉の娘婿と同姓同名の配信者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。