人間というシステムの圏外で
- ★★★ Excellent!!!
女性がいて、男性がいて、性交によって、新たな子ができる。
たったそれだけのことを誘発するために、人間には気味が悪いほどよくできたシステムが搭載されている。人々はこのシステムの円環に身をゆだねていれば、それなりの子孫の繁栄を享受することができた。
ただこのシステムも経年劣化が進んでいるらしい。
システムを逆手に取るような「異分子」が多数発生し、そこかしこで「エラー」が発生している。逆にシステムの中に無理矢自らを当てはめようと、奇妙に湾曲していくものもいる。
別に、それが正しいとか、間違っているとか、そういう話がしたいわけではない。
そんなシステムの円周上から図らずも逸脱した人間の、わずかな身じろぎを、本作は見事に描き出している。
もう自分の作家人生を終わらせたくなるような名作だった。