人間というシステムの圏外で

女性がいて、男性がいて、性交によって、新たな子ができる。

たったそれだけのことを誘発するために、人間には気味が悪いほどよくできたシステムが搭載されている。人々はこのシステムの円環に身をゆだねていれば、それなりの子孫の繁栄を享受することができた。

ただこのシステムも経年劣化が進んでいるらしい。
システムを逆手に取るような「異分子」が多数発生し、そこかしこで「エラー」が発生している。逆にシステムの中に無理矢自らを当てはめようと、奇妙に湾曲していくものもいる。

別に、それが正しいとか、間違っているとか、そういう話がしたいわけではない。

そんなシステムの円周上から図らずも逸脱した人間の、わずかな身じろぎを、本作は見事に描き出している。

もう自分の作家人生を終わらせたくなるような名作だった。