第121話

 さて、三か月が経過し、温泉が完成した。

 温泉のもとで作ったお風呂はほかほかといい感じにあったまっている。

 オレたちは男湯、女湯に分かれて、温泉に入ることにした。

 こっちは男性メンバー。

 そして女湯は女性メンバーである。

「ふー、いい湯だなー」

「これが温泉か」

「本当にヒットポイントが回復している。マジックポイントが回復している。でもヒットポイントが完全回復するには、温泉に長時間つかっていないといけないんだな」

「温泉ってすげえなー」

 男湯の温泉につかっているのはオレ、エレン、アレク、サック、トール、ロカ、ドレイク、リュウ、ノスカー、ゾーイ、リュウノスケ、ショウヘイ。

 温泉は広いとはいえ、さすがにこの人数は多すぎる。

 ショウヘイは温泉の中でも眼鏡をかけている。

 温泉で曇った眼鏡をくいっとおさえるのはショウヘイ。

「つか、異世界に来て、温泉に入ることができるとは思っていなかったぜ」

 と、言うのはリュウノスケ。

「そうだな。これもすべておっさんのおかげだ」

 と眼鏡をくいっとおさえていうのはショウヘイ。

 そして女湯。

 女湯につかっているのはグレア、エルマ、ユイカ、ミリカ、リョウコ、ゴブリンスレイヤーのメンバー、スライムスレイヤーの少女である。

 女性メンバーの肌は美しい。

 その白魚のように白い肌には真っ白なタオルが巻きつけている。

 反対に、男性陣はタオルなんてものは付けずに、全裸である。

 男性陣は筋肉ムキムキの全裸。

 筋肉ムキムキでも、細マッチョなのはトールとエレンぐらいだろうか。

 ただ一人、やせ型体系なのは、スライムスレイヤーの少年くらいだろうか。

 あんまり見たくないな、と思うくらいにむさくるしい男たちの裸がそこにはある。

 だが仕方がないだろう。

 ここは温泉だからな。

 ふう。

 いい湯だなー。

 オレたちはそんなことを思いながら、温泉につかっていた。

 温泉につかっていると、体力が回復する。

 マジックポイントが回復する。

 仕事の疲れが回復するし、クエストの疲れが回復する。

 このままずっと温泉につかっていたいなあとそんなことを思っていたら、女湯からは声が聞こえてくる。

 女性たちの声が聞こえてくる。

「うわー、ゴブリンスレイヤーさんってすごいんですね。みんな胸がおっきいんですね。いいなー。いいなー。わたしなんて、わたしなんて、自分で胸をマッサージしても、この胸は小さなままなんですよー」

 とかいう声が聞こえてくる。

「そ、そうかな? 別に普通だと思うけど。それに胸が大きいと、肩がこったりするし……好きでもない男の人からの視線があったりするんだよ?」

 とかいうのはゴブリンスレイヤーのリョウコの声だろうか。

「まあそのうち大きくなるよー」

 とかいうゴブリンスレイヤーのほかのメンバーの声が聞こえてくる。

「大きくなるのかな……」

 ちなみに胸が小さいことを気にしているのは、そのことを嘆いているのは、スライムスレイヤーの少女だろう。

 あの子は胸が小さいからな。

 スライムスレイヤーの少女にその胸を押し付けられたことがある人ならば、その胸の小ささはよくわかるはずだ。

 押し付けられたことに気が付かないくらいの胸の大きさだ。

 さて、スライムスレイヤーさんがゴブリンスレイヤーの少女にいたずらでも仕掛けているのか、自分よりも胸の大きな少女の胸をもみまくっているのか、女湯からはきゃああああというような悲鳴が聞こえてくる。

「ちょっと触らないでー」

「ふっふっふー、わたしよりも胸が大きいのが悪いんですっ。ふっふっふー、覚悟ーーーー」

 とかいう楽しそうな声が聞こえてくる。

 女湯は楽しそうだ。

 男湯ではそんな楽しそうな風景にはなっていない。

 男湯では筋肉ムキムキの男が、仲良く並んで温泉につかっているだけである。

 こっちはやけに静かだな。

 女湯は楽しそうなのに。

 と思ったら、

 その女湯から聞こえてくる声に、

「!」

「!」

「!」

 まず異世界召喚者が声に反応していた。

 これはゲームでいうところの修学旅行イベントならば、みんなで女湯をのぞきにいくというイベントが発生するのだろう。

 ゲームだと、そういったイベントが発生するからな。

 そして男メンバーが仲良く女湯をのぞいていることが女性メンバーにばれて、女性メンバーに説教される、怒られるというイベントが発生するのだろう。

 さて、この中で女性メンバーの声が聞こえてきても、興奮するどころか、何やってんだこいつら……という顔をしているのは、トールくらいのものである。

 ロカとかドレイクでさえ、女湯から聞こえてくる声に聞き耳を立てているというのに。

 トールは割とイケメンだからな。

 そういったことはもう卒業しているお年頃なのだろう。

 ここはトールが女湯のぞきにいこうぜ、とかいうセリフを言ってほしいものなのだが、冷たい目線でオレたちのことを見ているだけである。

 スライムスレイヤーの少年はといえば、その女湯から聞こえてくる声には興味があるのか、顔を赤くしながら、女湯から聞こえてくる声に耳を傾けていた。

 スライムスレイヤーさんのモデルの女の子が女湯で大奮闘している声が聞こえてくる。

 女湯からはゴブリンスレイヤーの女の子の悲鳴がまだまだ聞こえてくる。

 女湯は楽しそうだ。

 やれやれ。

 という顔をして、気にせずに温泉につかっているのはミリカあたりなのだろうか。

 エルマあたりなのだろうか。

 グレアあたりはゴブリンスレイヤーのメンバーの胸を見て、自分の胸の小ささを気にしているのかもしれない。

 もっと大きくなりたい。

 とか思っているのかもしれない。

 女湯は楽しそうでいいな。

 こっちはヒットポイントが回復しているとか、マジックポイントが回復しているだとか、普通に温泉に入っているだけなんですけどね。 

 まあスライムスレイヤーの少年が女湯から聞こえてくる声に興奮したのか、だんだんとその顔が温泉に沈んでいっているんですがね。

「おい、少年、大丈夫かっ」

「大丈夫でふ」

 とかいうスライムスレイヤーの少年のことを、心配するゾーイとかノスカーとかA級の冒険者。

 オレたちは女性メンバーが女湯で体に白いタオルを巻いて、温泉につかる姿を想像した。

 ゲームとかでよくある女の子が温泉に入るシーンを想像した。

 さて、温泉に入ったおかげで、オレたちはヒットポイントが全回復していた。

 マジックポイントが全回復していた。

 温泉というのは本当にすごいな。

 オレは温泉を作って本当に良かったと、そんなことを思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に召喚したくせに、無能という理由で追放ですか? そういうのなら仕方ありません。出ていきます。 @lili032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画