普通の主人公と光を探したヒロインの話

※過度なネタバレは含みませんが、一部ネタバレを含む可能性があります。
 レビューを読む前に一応作品を読むことをオススメしておきます。

一言で言うと。
"主人公に特別な力があったり
特別な優しさや強さ正義感が無いからこそ生まれた特別な作品"だと思います。

 傾向として多いのは主人公は普通とは言いながらも何かしらの力でヒロインを助けますが、この作品はそうではなくなし崩し的に主人公とヒロインの関係が始まり、その関係はこの主人公らしさによって継続します。

 恐らく、主人公に正義感や強さというぽさが少しでもあれば、物語は良い方向に進むかもしれません。しかし私が求めている作品は主人公が弱さに気づきながらも、それを認めながらも温かい状況に依存してしまう。そして共に依存している状況をよしとしながらも、進みたがっているもどかしさの部分です。

 その傾向を活かすのが活発的とは言えないダウナー系のヒロインです。
 出会ってから不思議な雰囲気な彼女の家庭環境に足を突っ込むことなく、比較的様々なことに消極的な主人公と、それらについてあまり踏み込まれたくないヒロインの出会いは、共に一緒に居る"居場所"になりました。それは単衣にダウナー系という何ともミステリアスな雰囲気から来ているものだと思います。

 最初こそ両者消極的でしたが交流を深めていくにつれて、関係が深くなるにつれて見えていく部分が増えます。共に居場所として繋がりが強くなります。一方で両者共に、何処か変えていかないといけないと分かっていて、それで少しずつでも何かを変えようとしているというのが前向きに見えて良いなと思いました。

 ストーリーの全体像的には割とテンプレートと言われるものがあるかもしれませんが、このヒロインにしか出せない良さ、ダウナー系であり、何処か闇を抱えていて、愛に飢えながらも愛を嫌っているという矛盾を孕んでいて、何処か消極的な部分というのが非常に良くできていて、また主人公は主人公で特別ではないけど、ヒロインにとって特別であるという点が好みです。

 等身大から背伸びをすることなく学生らしい悩みもありつつ、また上手く進むことが出来ない、なし崩し的に進んでしまう物語というのも、らしくないという点で私は好きです。

 誰もが憧れるヒーロー像がありますし、誰もが憧れる愛の形があります。
 ただ、誰だって誰かのヒーローになることは出来るし、愛の形は様々なものがあると思います。そんな誰でもないヒロインとっての光となる存在の主人公と、そんな主人公を光にしてくれるヒロインが居る素晴らしい作品です。

 長くなりましたが、今後の作品展開も楽しみにしています。

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