最終話

「いのちあるものよ。またいのちなきものよ。あなたがたの人生はくるしみにみちています。かなしみにみちています。このかなしみをわたしは『エントロピー』とよびましょう。エントロピーとは『熱』であり『こんとん』であり『破壊』です。なぜがんではエントロピーが発生するかというと『宇宙』そのものがエントロピーを欲しているからです。宇宙はエントロピーなしでは生きられません。ゆえにあなたがたは憎悪しあいさつりくしあい戦争をしあって宇宙のためにエントロピーを発生させつづける運命にあるのです。無論それはあなたがたのかなしみであります。が安心してください。あなたがたはわたしの誓願によってかならず極楽浄土へと成仏するでしょう――」と。するとれきで楼閣をつくって遊戯していたひとりの童子が質問してきました。いわく「なぜあなたはそんなことをぞんなのですか」と。

 わたしはかんとして物語りはじめました。

「わたしはながいながいむかし一本の『超紐』でした――――」


〈了〉

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『天よわれらのすべてのなみだを無きものにしたまえ。』短篇小説 九頭龍一鬼(くずりゅう かずき) @KUZURYU_KAZUKI

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