年が明けた。


「ヤらずにする後悔より、ヤって後悔する」

八代やしろ、歩きながらデンジャラスな指針、立てないで」

 友人と八代は、テーマパークで一日遊んだ帰りで、友人にいたってはローブを購入し、魔法の杖を手にしていた。


 二家本には、あれきり会っていない。

 ああいう関係は一回こっきりのほうがいいのだと。頭ではわかっている。

 二家本の得意選択科目は、彼氏と別れたばかりの女子を慰めるコト。

 だからといって、誰かれ構わず慰めてはいないはずだ。

 そう、八代が都合よく、見たいように見ているだけか。


 二家本に会う機会は、もうないかもしれない。

 もう就活の季節だ。


「あ、八代やしろの元カレだけど。彼女にフラれたみたいだよ」

 この友人も、元カレとの共通の友人だった。 

「へー、そりゃ、ゴシュウショウサマご愁傷さま

八代やしろが純情でかわいかったって、言ってたー」

「純情……、当社比?」

八代やしろさえよければ、戻りたいみたいだったよ。どーする?」

「……この世界にオトコって、何人いたっけ?」

さんじゅうごおく35億?」

 八代も友人も笑った。


 そうだよ。

 素敵な人は世界中に、いーっっぱい、いるんだ。

 二家本君は、一人しかいないけど。






       〈了〉

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石膏像にキス 〈2024〉 ミコト楚良 @mm_sora_mm

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