第2話
教室内を這いずり回る、人間大の『ゴキブリ』。
「ん〜、シュールだわね?」
誰もいなくなった室内で、教卓によじ登って立ち上がり、こちらを向いた『それ』と目が合った。
いや、正確にはこちらを向いた『それ』の視線を感じた。
『おい!』
「…………………………」
『おい、そこの女!』
「……………失礼ね。私かしら?」
『そうだ、おまえ、怖くないのか?』
「何をかしら?」
『ゴキブリが怖くないのか?』
「あら、貴方はゴキブリなのかしら?」
『違う!姿はゴキブリだが、違う!!』
「どちらにしても、怖くなんかないわよ?」
『頼む、見逃してくれ!追われてるんだ。何も悪いことなどしてないのに!!』
「…………………………いいわよ、貴方からは悪意を感じないから。」
敷地内全てに認識障害を掛けて、
「はい、これで出られるわ。行きなさい。」
『…………………………いいのか?』
「良いも悪いも、あなた次第よ?」
『感謝する!』
「感謝なんか、要らないわよ。早く行って。」
※※※※※※※※※※※※※※※
帰りの馬車に揺られながら、溜息をつく。
「…………………………ねえ?」
『…………………………俺か?』
「そう、あなた以外に誰が付いてくるのかしら?」
『…………………………こんなに離れているのに見えるのか?聞こえるのか!いつからだ?』
「ん〜、まあね?最初からね。」
『…………………………恩返ししたい。』
「要らないわよ。付いてこないで。」
『………………………………………』
「貴方が出ていった後、大変だったんだからね?」
『………………………………………』
※※※※※※※※※※※※※※※
屋敷内、自室にて。
「ねえ、お姉様?」
「何かな?」
「表門の前にいる『ゴキブリ』、姉様を呼んでるんだけど?」
「…………………………放っておきなさい。」
※※※※※※※※※※※※※※※
「ねえ、姉様?」
「何かな?」
「雨が降ってきたわね。」
「………………………………………」
「可哀想ね?」
「放っておきなさい。」
「まだ何も言ってないわよ?」
「………………………………………」
「…………………………中に入れてあげていい?」
「やめなさい!」
「………………………………………」
「………………………………………」
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