第3話
「ええい、まだ見つからぬか!」
「はっ、捜索中であります!」
ゴキブリの魔物が侵入して見失ってから半刻ほど、忽然と消えたと報告を受けたもののこの大失態を挽回するには捕らえるしかないだろう。
上位貴族も通うこの学院。
魔物が侵入しただけでなく捉え損なったとなれば私の責任問題となるだろう。
それだけではない。学院内で魔力を行使して攻撃した者がいたのだから、本来ならば重罪として処分は免れない。
「報告します!裏門の脇の茂みから外へ出た跡を発見しました!報告に有った侵入者の体格と魔力痕と合致します。魔力探知犬の追跡とも一致しました!」
「……………そうか、ご苦労。報告書を至急上げてくれ。」
「はっ、承知しました!」
…………………………何故、魔物の侵入を許したのだ。
対魔物用結界を抜けて出入りしたというのか?
有り得ない。
上位のドラゴンでもない限り、侵入も脱出も困難な筈だ。
…………………………魔物では無かったというのか?
※※※※※※※※※※※※※※※
「ねえ、お姉様?」
「なあに、妹よ?」
「そろそろ、中に入れてあげましょうよ?」
学院が侵入事件で閉鎖されてからはや三日。
「…………………………仕方ないわね?」
我が妹ながら、
テーブルの上のベルを鳴らし、執事を呼んで、
「正門脇のゴキブリを呼んで頂戴、あっ、玄関前までね。私が出向くわ。」
「いえ、いけません。客間へお通しします。」
…………………………変わっているのは、私達姉妹だけではなかったか。
「お嬢様達の『念話』が聞こえてしまいました。悪い魔物とは思えません。いえ、魔物では無いかもしれません。
魔物なら正門前に近付く事すら出来ない筈ですから。
私が責任を持ちますので。」
「…………………………わかりました。念の為、警備は万全にね。」
「はっ、私が直接担当致します。」
流石、我家の執事長。
軍用結界よりも固い我が姉妹の念話を読み取るなんて。
私達もまだまだだわね?
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