デート ~ゲーム解答編~

「よくわかったねー」

 拘束を解かれた僕は、チョコレートを食べながらさっちゃんと話す。

 ちなみに点滴台はもう撤去されたので、彼女がどこまで本気だったのかは知る由もない。

 彼女なら「わたしの好きなすずくんはこのくらいわかるもん。わからないってことは死んでもいいしわたしも一緒に死ぬ」とか言い出しそうなんだよな。

 言わんでくれ。


「危なかったよ。普通に214って言うところだった」

 答えが107だったので、バレンタインの214や記念日の320、どちらを唱えていたとしても僕はバレンタインデーデスしていたことになる。死因、血管へのチョコレート注入。なんだそれ。

「でも、なんか214って数字が気になって。試しにそれを二人でわかちあう……つまり、割ってみたら107って数字が出てくるよね。107。一見するとなんだか半端な数だけど、これはとても意味のある数字だ」


 

 1とその数自身との他には約数がない正の整数。

 例えば、11。

 11は、1と11以外では割ることができない。

 ファミリーパック11個入りのお菓子があったらみんなブチギレるだろう?

 あるんだけどな、この世には。


 さっちゃんの言った、「ゲームマスターやディーラーもいらない。で楽しみましょう?」というセリフは、そのまま素数を意味していたんだ。

 バレンタインデーを二人でわかちあうと、僕とさっちゃんだけが登場する行事になる。

 だから、107。

 これが僕の解答した答えであり、どうやらそれが正解だったみたいだ。


「あー、楽しかった。すずくんさすがだねえ、わたしのことならなんでもお見通し」

「僕は死を覚悟したんだけどね」

 そもそも殴られたところから始まったからね?

「そんなわけで、わたしからのバレンタインは以上だよ。お腹もすいてきたし何か食べに行こー」

 さっちゃんは自然と僕の左手をとり、笑顔で指を絡める。

 僕もつられて笑う。

 僕たちだけの世界。

 今日はいろんな人がいるだろう。

 チョコレートを渡した人、貰った人。

 渡せなかった人。

 自分用に買った人もいれば、貰いすぎて困っている人もいるかもしれない。

 今作っている人だっているだろう。

 いろんな人がいて、いろんな関係性がある。

 今日はそんな、いろんな関係性が前に進んだり、戻ったりする日。

 苦くて甘いチョコレートみたいな日。


 そして僕の隣にはさっちゃんがいる。きっと、来年も。


 ふと、空を見上げて考える。




 …………う~~~~~~~ん。ホワイトデー、なにしよう。



<バレンタインデーデス おわり>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バレンタインデー・デス 姫路 りしゅう @uselesstimegs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ