デート ~ゲーム本編~

 さて。

 僕は考える。

 本気で考える。

 本気で考えないと、本当に死ぬ。

 さすがに冗談だとみんな思うでしょ?

 でも、冗談でこんな大掛かりな装置は用意しないだろ。

 そこに0.1%でも本気である可能性があるのなら、僕は本気で考えるべきだ。


 まずは一つ一つ整理していこう。

 さっちゃんはmLを問うている。

 でも、市販のチョコレートって普通グラムで販売されているよな。

 チョコの比重なんてさすがに知らないけれど、水と同じの1であるはずはないだろう。

 つまり、さっちゃんが用意したチョコは市販品ではない。

 どこかのお土産など、僕たちの思い出の市販品チョコなどではないのだ。


 ということは、数値自体に意味があるはず。

 まさか下限ピッタリの1mLや、上限ピッタリの4500mLではないだろう。それはなんというか、美しくない。


 だったら考えられる可能性は?


 例えば語呂合わせ。

 チョコ→ちよこ→745とか?

 さっちゃんは麻雀打ちなので「ち」を「チー」と置く可能性もゼロではない。

 じゃあ745mLが答えだろうか。

 ううん、なんだかしっくりこないな。

 大体チョコレートの日だからチョコの語呂合わせっていうのも美しくない。

 レートどこ行ったんだよ。


 あとは、記念日。

 僕的にはこっちが本命だ。

 例えば僕たちが付き合ったのが……えっと、そう。3月20日だから、320mL。

 可能性は全然ある。

 僕かさっちゃんの誕生日ってセンも考えられなくはないけれど、”バレンタインデーは不公平だ”とさんざん言ってきておいて、どちらかの誕生日を設定するとは思えない。

 だから、付き合った記念日。

 320mL。


 もしくは、今日。バレンタインデー。

 バレンタインデーデスというゲーム名なくらいだし、シンプルに214mLというのは可能性として高い。

 それに、仮に僕が214mLだと宣言して、結果が記念日の320mLだったとしても、抜かれる血は106mLで済む。

 それは一般的な献血よりも断然少ない。


 もうこれで宣言してしまおうか。

 214。なんか綺麗だし。


「じゃあ、さっちゃん。答えを言うね」

 するとさっちゃんは微笑みながら「いいよー」と言った。


 その瞬間、僕の脳に電撃のようなひらめきが走った。


 214

 

 

 


 そっか。

 あー、ずっとヒントくれていたじゃん。

 今日は2月14日で。

 それを2人でわけあいたくて。

 その結果出た数字には、僕と君、二人しかいない。

 

 僕は彼女の用意した答えに少しだけ感心しながら、その数値を言った。


「107。さっちゃんが今年用意したチョコレートの総mLは、107mLだ」

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