第2話 [お前の親父、組長なんだってな]
福岡県にG会という指定暴力団がある。
1960年代くらいからG会は田川市を中心に絶大な力を持つようになったが、この組織屈指の武闘派として知らされた大幹部がいる。この大幹部の息子として育ったのが、A男だった。
A男が物心がついた頃、親父は、傍らにいなかった。暴力団同士の抗争で殺人事件に関わり、長期の懲役に行っていたのだが、母親からは[病気で入院している]と聞かされていた。
そんなA男に声をかけてくるのは、先輩の不良グループだけだった。彼らはこう言った。
[お前の親父、ヤクザの組長なんだってな。マジすげぇな。お前、俺たちのグループに来いよ]
世間からはヤクザの家ってことですけぇ嫌がられるし、グレたらグレたで、今度は警察が待ってましたとばかりに追いかけ回される。10代の頃は、どちらへ行っても地獄みたいな感覚だった。
18歳の時、ささいなことを理由に指名手配を受けて、二度目の少年院送りになりそうだった。
暴力団の息子たちが語る[差別の現実] 司忍 @thisisme
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