【三題噺 #48】「報告書」「ダンボール」「友情」(699文字)

 クロスワードパズルを解こう

 倉庫の中の棚に並べられているダンボール箱の中から、三人でたった一つの報告書を探し出さなければならない。


「『私の息子が習字大会で銀賞を取った時の金賞は何という言葉か』って何よ。息子って二人いるじゃない。せめてどっちの息子かぐらい教えて欲しいわよね」

「おい、見つけたぞ。次男が受賞した時の金賞は『新年』だ。八の縦は『シンネン』だ」

「いいえ、それは違います。四文字じゃありません」

「ねえ、見て。この習字教室、毎月大会してるわよ」

「なんだそれ」


 僕たちというより僕以外の二人は、文句を言いながらダンボール箱を開け報告書を確認していく。

 数時間後にやっと見つけた。


「ありました。これです。『友情』八の縦の答えは『ユウジョウ』です」

「もういや。こんなことやってたら、いつ解けるか分からないじゃない」

「でも解かなければこの山荘から出ることはできません」


 僕たちは山荘でクイズを解いて一千万円をもらうというイベントに参加している。       

 参加条件は粘り強く諦めない人とあった。


「ねえ、次のヒントどれにする?」


 普通クロスワードパズルは全部のヒントが書いてあり解けるものから解いていく。だがこれは一つヒントが出たらそれを正解するまで次のヒントが出ない。

 分かるものから埋めていって分からないヒントの手がかりにするということができない。


「十の横はどうだ」

「うん、それでいいわ」

「ではそれにしましょう」


 十の横のヒントは「次の私の誕生日に送られる長女からのプレゼントは何か」


「え、何? これから送られるってこと? それまですることないじゃない」

「この人の誕生日っていつなんだ?」


 報告書を見つけて僕たちは絶望した。

 この人の誕生日は二ヶ月前だった。

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自主企画に参加した短編集 3 @mia

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