第7話
「絵梨さんは、ユウを好きみたい亅
スマホに文字が、浮き出る。
エリは、絵梨を恋人にするよう、勧めた。
絵梨は、既に有名美容師になっていた。
スタイリストという横文字の肩書きを持ち、眩しい世界の売れっ子になっていた。
彼女自身の姿をテレビで見る日もあった。
相変わらずエリの髪を切る事は、忘れないでいてくれた。
僕たちは、恋人になった。
彼女は、僕の思いを喜び受け入れてくれた。
彼女の雰囲気は、ますます華やかさを増した。
やがて結婚を望む頃、机の上の人形の雰囲気も変わっている事に気づいた。
「助けてください、助けてください」
久しぶりに、スマホに呼び出した彼女。
スマホの中の彼女は、美しいが素朴な雰囲気に変わっていた。
机の上の人形も素朴な雰囲気を纏っていた。
エリハ、ドウシタノダロウ?
絵梨とふたりの食事。
「君のお母さんに挨拶に行かないとね」
絵梨との結婚の話の途中、僕が言い出すと、彼女は不思議そうに僕を見た。
「どうして?」
その夜、スマホの画面に浮かび上がった文字。
「助けて、私は絵梨」
僕は、再び説明書を読むことにした。
僕は婚約を破棄した。
エリは、絵梨に。
絵梨は、エリに戻った。
「どうして?私が人間になれば、ユウはもっと幸せになれるのに」
スマホに文字が浮かぶ。
人形が与える幸せは、その心に愛の火を灯した人形と人間が入れ替わる事で成立するようだ。
アプリドールの説明書。
人形が繋いだ幸せを手放すと、その方との縁は永久に切れます。
新しい縁をお望みの場合、新たな人形をお求め下さい。
僕は、新たな人形を求めなかった。
僕は、スマホに文字を打つ。
「ボクハ、ニンギョウノキミヲアイシテイル」
終わり
アプリドール @ramia294
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