第5話「モアイ男からの挑戦状」

 Side 鮫野 シンイチ


 =朝・喫茶店フレンド=


 俺――鮫野 シンイチはサメの改造人間である。

 同時に人の子でまだ学生の身分。

 父親と母親と妹とで一緒に暮らしている。

 

 何も言ってないのに「言わなくても分かってるから」と言って何故か気を遣われた。


 ちなみにモッくんは喫茶店フレンドのマスコットキャラとして住み込みで働いている。

 

 花畑高校もそろそろ再開かな~と言うところでフレンドに客が――


『どうも、ブラックZのモアイ男だ。コーヒーを一杯』


(またストレートなの来た!?)


 モアイ男。

 顔がモアイ。

 黒いタイツにバックルベルト。

 赤いマントを羽織っている。

 それだけ。

 ここに来る途中で不審者として通報されてそうだ。


 そして「あいよ」と普通にコーヒーを差し出す塚本のおやっさんも大概だ。

 

『お前に決闘を申し込みに来た。場所は近くの採石場だ。時刻は今日の昼頃だ――うん、美味い』


 コーヒーが口に合ったらしい。

 丁寧に代金を支払ってその場から立ち去った。

 パトカーのサイレン外でが鳴り響いたが、モアイ男が職質されてない事を祈ろう。



 =昼・近くの採石場=


 採石場にサメバイクに乗って行くと採石場の広場で一人ポツンとモアイ男が立っていた。

 手には日本刀を持っている。

 何故日本刀?

 まあこっちもチェーンソーとか使ってるし、おあいこだろう。


『よく来たな。鮫野 シンイチ。一対一、男と男の正々堂々の真剣勝負を求む』


『お、おう』


 モアイなのに男気溢れる真剣勝負の誘い。

 俺はモッくんに『てなわけで一対一で戦ってくるから手出ししないでくれ』とお願いした。 

 モッくんは『わかった~』とノンビリした口調で離れた位置で立ち止まる。


 俺とモアイ男はそれぞれの得物を構えて睨み合う。

 緊迫感漂う空気。

 こちらのチェーンソーが唸りをあげて、刀を静かに構えるモアイ。

 

『では勝負!!』


 チェーンソーVS日本刀の対決が始まった。

 チェーンソーを弾いて、胴体を袈裟斬りにし、火花が散った。

 このモアイ強いぞ!?

 

 こちらのガムシャラのド素人剣術で勝てるかどうか怪しい。

 防戦一方になる。


(このままじゃ負ける!! 相打ち覚悟で攻めるしかない!!)


 体中から、相手の斬撃のたびに火花を散らしながらチェーンソーを振るう。

 ひらりと躱され、刀で弾かれたりはするが徐々にチェーンソーの直撃も増えていく。

 正直自分もボロボロだった。

 この時ばかりは改造人間であることに感謝した。

 

 戦いはやがて泥仕合になっていき――


『今日の勝負はこの辺にしておこう』


 モアイが飛び引く。

 火花を散らし、よろめいている。

 

『逃して貰えるのか? 正直ありがたいんだけど――』


『この戦い、この場で終わらせるのは惜しい。またその時まで――』


 そしてモアイは何処からともなくやって来たバイクに跨り去っていく。

 恐ろしい敵だった。

 俺もボロボロである。

 また戦ったら負けるかもしれない。

勝てたとしても無事では済まないだろう。

恐ろしい強敵だった。

 

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