第4話「カメレオン男とナチスの遺産」

 Side 鮫野 シンイチ


 =喫茶店フレンド=


 その男が現れたのは突然だった。


「どうもFBIの沖 宗一捜査官だ。早速だがブラックZの秘密情報を掴んだ」


 沖 壮一捜査官。

 昭和の青年役者みたいな濃い顔をしている。

 体つきも武道の有段者だろうか、しっかりしていた。


「コーヒー苦い。けど美味しい」


 そしてモッくんはコーヒーを飲んでいた。

 無理して苦いコーヒーに再チャレンジしていたようだ。

 

「ブラックZはどうやらナチスの遺産を使ってよからぬ事を企んでいるようだ」


 まさかのナチスである。

 B級映画のテンプレ素材だ。

 日本になぜナチスの遺産があるのだろうか。

 それも今になって。

 そんなのブラックZの連中に聞いてみるしかない。


 =ナチスの遺産がある場所=


「こんな山奥にナチスの遺産が――」


 ナチスの遺産があるらしい場所は近所の山奥にあるらしい。

 そんな場所に俺とモッくんと沖さんの三人で進む。


『キィ―!!』


『キィ―!! キィ―!!』


 そして行く手を阻むように全身黒タイツのブラックZの戦闘員が現れた。

 ついでにカメレオンの怪人が現れた。


『俺の名はカメレオン男!! よくぞ我達、ブラックZのナチスの遺産を使う計画を嗅ぎつけたな! 貴様達にはここで死んでもらう!』


 との事である。

 まるで事情を知らない第3者に説明しているかのような口調だ。

 俺も変身してチェーンソーを構える。

 モッくんもチェーンソーを構えた。

 沖さんは銃を構える。


 カメレオン男は姿を消した。

 だってカメレオンだもの。

 姿ぐらいは消すよね。



 =ナチスの遺産があるらしい基地=


 戦闘員を薙ぎ倒し、時折奇襲を仕掛けて来るカメレオン男を迎撃しつつ、俺達はナチスの遺産がある場所へとたどり着いた。


 それにしてもナチスの遺産とはどんなものだろうか?

 などとシンイチは思っていると、大広間に辿り着いた。

 

「これがナチスの遺産か!!」


 沖さんが見上げる。

 俺もモッくんも見上げた。

 それは50メートル程の黒塗りのロボットだったのだ。

 昭和の特撮物とかに出て来そうな古臭そうなデザインだ。

 ご丁寧にナチスのマークまでついている。

 

『そうだ!! これこそがナチスの遺産、ギガースマシンだ!! これを使って街と言う街を焼き払うのが我々の目的だ!!』


 と、カメレオン男は雄弁そうに語る。

 クモ男といい、コウモリ男といい、こいつといい、なんて親切な悪の組織なんだろうか。

 

 などと思っているウチに黒い巨大ロボットが起動する。

 やばいやばい。

 50mの巨大ロボ相手に等身大のヒーローが敵うわけがない。

 

『そのナチスの遺産でブラックZの裏切り者を倒すのだ!』


 膝立ちになり、身体の各部から光線やミサイルなどを発射する。

 こんな狭い場所でぶっ放すようなもんじゃないだろう。

 戦闘員やカメレオン男も巻き込んでるぞこれ。

 

『生きてますか沖さん』


「ああ生きてる――畜生――ナチスの遺産だからって何でもありかよ」


 沖さんは大丈夫そうだ。

 モッくんも「揺れる~」とか言いながら床を転げまわりながら攻撃を回避している。


(ダメもとでやってみるか)


 膝立ちになってるので高さは20mぐらいになっている。

 一か八か頭部に飛び移って殴り込む事を決心した。


『とお!!』


 ジャンプ。

 改造人間の驚異的な跳躍能力で頭部に飛び移る。

 そして目にパンチを入れて内部に突入。

 運よく巨大メカの相乗席に辿り着いたらしい。

 抵抗してきた戦闘員を殴り倒し、コクピットをメチャクチャに破壊して回る。


 そして脱出。

 外ではカメレオン男とモッくん、沖さんが戦っていた。

 モッくんはチェーンソー片手に斬りかかり、沖さんが拳銃で援護してくれている形だ。カメレオン男は透明化を繰り返しながら襲撃を行っている。


『おのれ、よくもナチスの遺産を破壊してくれたな!』


 などとお怒りになるカメレオン男。

 とりあえず俺もチェーンソーで斬りかかる。

 

『こうして透明化すれば俺様の位置は分かるまい!!』


『ああ、うん。そだね』


『ぐわあああああああ!? どうして位置が分かった!?』


 声がした方向に斬りかかったら上手い具合にチェーンソーが直撃してくれた。

 一気に両断する。


『ぶ、ブラックZに、栄光あれぇええええええええええ!!』


 カメレオン男は断末魔を挙げて大爆発した。



 =夕方・基地の外=


 こうしてブラックZのナチスの遺産を巡る野望は阻止された。

 基地もロボットも跡形もなく爆破され、二度と悪用されることはないだろう。


「じゃあ俺は行くよ――ブラックZの事を掴んだら知らせるよ」


「沖さん……」


 そう言って沖さんは立ち去る。

 俺とモッくんはその背中を見送った。

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