第3話「極めたくなるんですよ!! 頂点を!!」

 Side 鮫野 シンイチ


 =喫茶店フレンド=


 鮫野 シンイチ宛に果たし状が届いていた。


 宛名は花畑高校で同じクラスの佐乃だった。

 それ以上の接点はない、他人同然の存在だ。


 それどころか住む世界が違うと言ってもいい。

 少女漫画か乙女ゲーに出てきそうな、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗と3拍子揃った奴なのだ。


 にも関わらず自分宛てに果たし状が届いた。

 果たし状の内容は「お前を殺す。手紙に書かれた場所に一人で来い。でなければ無関係な人々を殺す」と言う旨の内容が書かれていた。


 それだけなら警察に通報するところだがブラックZの刻印が刻まれているのを見て、正直色々と不可解ではあるが断る理由はなく、指定された場所である封鎖された花畑高校に向かった。



=昼・花畑高校=


 一時的に封鎖された花畑高校。

 昼間だと言うのにまるで幽霊でも出そうな雰囲気だ。


「ここか――」


「よく来たな」


「どうしてお前が――つかお互い会話したこともないだろう」


「そうだ。だがお前は組織の反逆者で、俺はブラックZの一員になった」


「正気か?」


 あんな本気で世界征服とか宣うカルト連中の一員に、成績優秀でスポーツ万能で女子にモテた男が?

 正直信じたくなかった。


『ああそうだとも!!』


 そしてサソリ怪人になった。

 ……うん、頭弄られてオカシクなったに違いない。

 そうとしか思えない。


 だが俺も取りあえずは変身した。


『この力!! この高揚感!! たまらないんですよ!! お前を殺せばさらに力をブラックZが与えてくれる!! それがたまらなく嬉しい!! 極めたくなるんですよ!! 頂点を!!』


『クソ、気色悪い奴だな!!』


 とにかく気味が悪すぎる。

 だが実力その物は前回戦ったコウモリ男には劣るレベルだ。

 冷静に対処すれば勝てない相手ではない。


『やれ』


『ッ!?』


 急に戦闘員と一緒にカマキリ怪人が奇襲を仕掛けにやって来た。

 

『テメェ――』


『誰も一対一の決闘とは言ってないよ』


 そうして多勢に無勢の戦いが始まる。

 その時だった。


『なんだと!?』

 

 サメバイクに乗ってシュモクザメのモッ君が助けに来た。

 戦闘員やカマキリ怪人達が轢き飛ばされる。

 最高時速893kmは伊達ではない。


「卑怯な事は許さない」


 そしてモッ君が降り立った。


『モッ君、どうしてここに』


「心配になって来てみた。そしたら心配通りだった」


 との事らしい。

 何にせよ助かった。


『ええい、一人が二人になっただけだ!! 始末しろ!!』 


 俺は佐乃。


 モッ君はカマキリ怪人と対峙する。

 戦いに乱入する戦闘員は薙ぎ倒し、サソリ怪人と化した佐乃を追い詰めていく。


『正直言うと、あんまり接点は無かったけどクラスメイトを殺したくはない!! 目を覚ませ!! お前はブラックZに騙されているんだ!!』


『ここまで来ておめでたい野郎だ!!』


『倒すしかないのか……』


 シンイチは迷う。

 佐乃を殺す事を。

 

 何度も言うが佐乃とは赤の他人である。

 友人でも何でもない。

 だけど、どうにかして殺す以外の選択肢がないか悩んでいた。


『グハッ!!』


 そしてゴロゴロとカマキリ怪人が佐乃の前に転がり込む。

 体からはバチバチと火花を散らしている。

 ボロボロになっていてどうやらモッ君がやったらしい。


『役立たずは死ね!!』


 そしてあろう事か、トドメを刺したのは佐乃だった。


『お前、仲間を!?』


『仲間? 競争相手の間違いだろう。役立たずは全員死ねばいい』


『……迷うのはもう辞めた。お前はここで倒す!! そうしなければもっと沢山の犠牲者は出るから!!』


『カッコつけやがって!! そう言うのイライラするんだよ!!』


 そしてシンイチはチェーンソー片手に怒涛の勢いで攻め立てる。

 一撃、二撃、足技を繰り出しながらも着実に追い詰めていく。

 その勢いはモッ君にも伝達したかのように激しくなる。


『馬鹿な!! この俺が!!』


 そう言ってよろめき――


『お前殺すのか!? 俺を!? クラスメイトを殺すのかよ!?』


『それは――』


 そう言われると手を止めてしまう。

 だが間一髪のところでモッ君に佐乃の攻撃を防いで貰った。


『チィ!!』


「もうアイツ悪い奴、倒さないとダメ」


『そうみたいだな――』

 

 モッ君にそう言われて俺は覚悟を決めた。

 両サイドから挟み込むようにジャンプ。

 そしてモッ君と俺でケリ技を放つ。

 

「『Wシャークキック!!』」

 

『があああああああああああああああああああああ!?』


 X字を描くような左右から挟み込むような蹴りの一撃。

 それが佐乃の最後だった。

 

『……』


「どうした?」


『いや、これで良かったのかと思ってな』


 敵は倒したが、それは同時にクラスメイトを殺したと言う事だ。

 例え接点がなかったクラスメイトであったとしても。

 その事実が心に伸し掛かった。


 同時に思った。

 自分がやっているのは人殺し同然の事なのだと――


『……帰ろう』


 俺はやり切れない気持ちを抱えながらモッ君を乗せてサメバイクに乗り、喫茶店フレンドに帰って行った――

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