俺はサメでヒーロー! シャークマン!

MrR

第1話「俺は鮫で、ヒーロー!!」

 Side 鮫野 シンイチ


 鮫野 シンイチは学校帰りの途中、全身タイツの奇妙な集団に拉致され、世界征服を目論む悪の秘密結社「ブラックZ」によりサメの改造人間にされてしまつた。


 しかし心ある科学者の手引きにより、どうにか脱出し、ついでにシュモクザメのサメの怪人と一緒に組織を脱出したのであった。


 =喫茶店フレンド=


 ここは小さな喫茶店フレンド。

 そこの店主である塚本のオヤっさんに相談をする。


「と言う訳なんですよ」


「まるで昭和の悪の組織みたいだな――」


 流石の塚本のオヤッさんも困惑する。

 まるで特撮ヒーローのテンプレみたいな展開だからな。

 だが変身まで披露したし、専用マシンも公開したし、なにより――


「コーヒー苦い……」


 ゆるキャラみたいなシュモクザメの怪人までいるのだ。

 ブラックZの組織のシンボルが描かれたバックルベルトに黒いタイツを履いている。

 SNSの漫画でみた事あるな、こんなキャラ。


「どうも、モッくんです。記憶ないです」


「うーん。確かに立〇のオヤッさんに憧れてた喫茶店はじめたり、バイク極めたりしたけど、いざ現実になるとな~」

 

 などとモッ君を見て別の意味で困惑する塚本のオヤッさんだった。


 そんな会話をしているとつけっ放しだったテレビからこんな放送が――


『突然ですが臨時ニュースです。花畑高校にブラックZと名乗る異様なコスプレ集団が学校を占拠ししました。警察にも被害が出ており――』


「おい、これじゃないのか?」


「とにかく行くしかない!!」


 モッ君も「出動~」と言ってトコトコと俺の後をついていく。

 俺は組織から強奪したサイドカー付きの青い専用バイク、サメバイクで出動する。

 最高時速893kmのスーパーマシンで様々な機能がついている。


 それで現場に急行だ。



 =花畑高校=


 花畑高校。

 何処にでもある普通で平凡な高校だ。

 そこで全身黒タイツの戦闘員やクモの怪人が警察官相手に破壊の限りを尽くしていた。

 下半身は共通して黒タイツに組織のシンボルのベルトで何か″予算不足″と言うワードが頭の中に響き渡るがとにかくシュモクサメのモッ君とともに戦う事にした。


「やれるモッ君?」


「モッ君、正義のために頑張る」


「大丈夫か――とにかく変身!!」


 そして鮫野 シンイチは変身した。

 見た目はまんまサメの悪の怪人と言った感じだ。

 救いなのは上半身と頭部のデザインが多少力を入れられているところだろう。

 上半身は鎧みたいだし、頭部は仮面〇イダー〇ォーゼ、あるいは宇宙鉄人〇ョーダインのスカ〇ゼルだ。

 

 早速此方に気づいた戦闘員たちが「キーキー!!」と奇声を挙げながら突撃してくる。


 それを力任せに次々とパンチと蹴りで倒して行く。

 モッ君も力任せに倒して行く。


『貴様は組織の脱走者!! どうしてここにいる!!』


『それはこっちの台詞だ!!』


 思わずシンイチは叫び返した。

 てか目的俺じゃないのかよとも思った。


『まあいい!! 我々の学生を組織の構成員に仕立て上げる学生徴兵計画を邪魔するのなら死んでもらうぞ!!』


 なんて親切な悪の組織だ。

 組織の計画をベラベラと喋ってくれたぞ。

 

『これでもくらえ!!』


 そう言ってクモの糸を吐き出す。

 その糸が胴体に当たり、まるで玩具のように投げ飛ばされる。

 学校の建造物やら地面やらとにかく好き放題に叩きつけられた。


『他愛のない。これが組織の最新型の改造人間か!! こんな期待外れの奴、俺が処分してくれる!!』


『好き勝手いってくれるじゃねえか!!』


 普通の人間なら即死亡レベルの攻撃をくらってシンイチは尚も立ち上がる。

 糸は手刀で切断。

 そしてクモ怪人の背後からモッ君がチェーンソーで斬りかかる。


『貴様は!? 失敗作の怪人か!? 何故我々に反逆する』


『モッ君、こんなでも正義のために頑張りたい』


『そんな理由で!!』


 シンイチが『よそ見している暇はないぜ!!』と殴りかかる。


『こっからは連係プレイだ!! いけるな!?』


『モッ君、頑張る』


 そしてシンイチとモッ君は二人でクモ怪人を追い詰めていく。

 シンイチが殴り蹴り、跳躍し、モッ君はパワーファイトに持ち込んでダメージを与えていく。

 徐々にだがクモ怪人から火花が散っていく。


『ば、バカな!? 一人が二人になった程度で――』


『決めるぞ!! 二人で飛び蹴りだ!!』


『モッ君頑張る』


 そして二人は跳躍。

 飛び蹴りを相手の胴体にかます。

 そのまま地面を数メートル滑り、再び跳躍して二人は着地。


『ブラックZに栄光あれぇええええええええええええええ!!』


 クモの怪人はそのまま爆散した。



 =喫茶店フレンド=


 ブラックZの学生徴兵計画を阻止し、クモ怪人を倒したシンイチとモッ君の戦いはテレビでもSNSでも話題となり、シンイチはサメ男だのシャークマンだの色々と言われていた。


 ただ第3者からすれば敵か味方も分からない状況だ。 

 なので皆好き放題に言っている。


 とりあえず喫茶店フレンドに戻り、塚本のオヤッさんの「おかえり。活躍見てたぞ。コーヒーでも飲むかい?」の笑顔と共に放たれた一言で救われたような気がした。


 差し出されたコーヒーに対してシンイチは「美味しい」、モッ君は「苦いけど美味しい」と言っていた。


 これがサメの改造人間にされた鮫野 シンイチの初めての戦い。

 

 ブラックZとの戦いの始まりであった。

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