身体は少女、頭脳は殺し屋。暗躍で成り上がる異世界復讐劇

 ある仕事で失敗した殺し屋が死の間際、異世界の少女の声を聞く。それは復讐の依頼だった。依頼を受け伯爵家の令嬢シオンとして転生した殺し屋は、彼女の復讐を果たすため伯爵家の乗っ取りを計画する。

 かつてのシオンは貴族の令嬢であるが妾の子として家族中から虐待されていた。復讐対象を家族と考えた主人公だが、年端もない少女の身体では力もないし、立場が低いシオンに味方をするのは、ドワーフという理由で迫害されているメイドのルーレンくらい。

 そこで当主の後継を巡って争う伯爵家の兄弟たちのライバル関係につけ込んだシオンは、対立を煽って互いを潰し合わせようとするのですが、伯爵家に宿る憎悪は、予想だにしない惨劇へと転がって……シオンは騒動の裏で糸を引く黒幕と暗殺者に気づいていくのです。

 シオンの水面下の駆け引きが興味深く、ほんの些細なきっかけで人間は狂気にはしる。人間の心の闇を色濃く描いた作品です。


(「殺し屋の憂鬱」4選/文=愛咲優詩)