シズカとハナビの三角関係

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私の名前はシズカ。


 名前が示す通り、人からは物静かな子だねってよく言われる。


 運動はあんまりしないし、本ばっかり読んでるからかな。


 でも、本当はけっこう五月蠅いと思う。


 家族には色々、喋ってるしね。


 そんな私には一人の友達がいる。


 その子の名前はハナビ。


 私とは正反対で、活発に動き回る子なんだ。






 私達二人は、仲良し。


 互いに互いのことを、きっと親友だって思ってるはず。


 赤ちゃんのころからの付き合いだもん。当然だよね。


 私たちの人生にはたくさんの思い出があるけど、その多くには二人の姿が一緒にあった。


 でも、まさかその友情が壊れかける日が来るとは思わなかったよ。


 だって、好きな人ができちゃったから。






 私達三人は、初めは仲のいい友達として遊んでいたの。


 三人ともクラスメイトだから、学校の課題で同じ班になったのがきっかけ。


 町の地図を作成するって内容だったかな。


 自分が住んでいる町をあらためて見つめてみようって目的のもの。


 それで、うまく馬があったみたいで。


 それから徐々に三人で遊ぶようになっていった。






 最初は意識なんてしてなかった。


 あの人のことはただの友達だと思っていたから。


 ほかのクラスメイトの女の子はかっこいいって言ってたけど。


 私はふーん、そうなんだで終わり。


 でも、ある夏の日。


 偶然ハナビがいない時、二人きりになったときに意識しちゃったの。


 その時私は、なれない浴衣を着てきて、それに合わせて下駄をはいてたんだけど。


 足が痛くなっちゃってたの。


 でも、あの人が背負ってくれた。


「ハナビには内緒な」って笑いかけられてドキッとしたんだ。


 その時に、好きになっちゃったみたい。


 でも、ハナビもあの人のことが好きだってすぐに分かった。


 今まで気づかなかったのに、恋をしたからなのか、ハナビとあの人の何気ないやり取りをみて、気づいてしまった。


 ハナビがあの人に向ける視線は、恋をしてる人のものだって。


 ハナビはいつから、あの人に恋してたんだろうな。






 好きな思いはどんどん大きくなっていく。


 だから、告白しようって考えていたのに。


 本当にそれでいいのって思いもあった。


 こまっちゃうよね。


 正直にこの気持ちを友人に打ち明けてから、正々堂々と頑張るべきかな。


 そう考えちゃう。


 でも、そんなことをしてハナビがあの人と結ばれちゃったら。


 嫉妬して苦しくなっちゃうかもしれない。


 どうしよう。


 ハナビから言ってくれればいいのにな。


 実は私には好きな人がいるんだよって。


 そう言ってくれれば、私も言い出せるのに。






 そんなことを考えていたから、ずっと先伸ばしにしていたから。


 ある日、ハナビが交通事故にあって死んじゃった。


 もっと早く勇気を出していればよかった。


 あの人が、ハナビか私か、それとも別の誰かを選ぶのか、もう選んでいるのか分からないけど。


 どんな選択でも……。


 こんな結末じゃ、何も喜べない


 私は分かっていたのに。


 ハナビは見かけによらず臆病で、本当に言いたい事を、なかなか言い出せない子だって。


 私があの人に背負ってもらった時も、そのあとも何かあの人に親切にしてもらった時も、うらやましそうな目で見ているだけだったんだから。


 どうしてこんな事になっちゃったんだろう。


 勇気を出して自分からハナビに打ち明ければよかった。




 私はハナビのお葬式で、後悔の思いと共にただ涙を流すしかなかった。



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シズカとハナビの三角関係 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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