遠い昔、たしか小学校のみぎり、国語の教科書にあり、読んだ(習った)記憶がある。一度だけ。
そのおりは、悲惨だとか哀しいといった、いわゆるバットエンドという感想で、それは根強くのこり、いまのいままで読みかえさずにいた。
そして数十年ぶりに再読し。
哀しいとか、悲惨とか感じなかった。
バットエンドではなく、ハッピーエンドといえるのでは、と気づかされた。
ごんの心象を描いた物語であり、そう読んだとき、ごんの願いは叶えられたわけだから。
そもそも、ウナギを兵十の母が亡くなる前に食べたがってたろう、悪いことしたという反省すらごんの解釈にすぎない。
兵十に同じく天涯孤独で、と同情したのもごんの解釈にすぎない。
そしてごんは、山の幸を毎日贈っているのは神さまではなく、自分だと知られたかったのだ。それが叶って亡くなったわけだから。
ごんの心象。つまり、ごんは天涯孤独であり、淋しく、だれかに必要とされたいと思っていたということだろう。
一瞬であろうが、知られて亡くなった。その長短など問題であろうか。
表現の巧みさ、叙述のうまさ、さりげなく、易しい表現ではあるが、感心させられもした。
創作するものにあっては、範とすべき作品であるように思う。