いつか、きっと

 「遅かったわね、どうだった?」

トンネルの出口には、おばあちゃんが待っていた。

「天狗さんは、あったの?」

「あ……」

なにから、どう話していいのかわからなかった。

それより、なにか言うとまた泣いちゃいそうで。

「……悠斗はると?それにあなたたちも、もしかして泣いてたの?」

おばあちゃんは困っているようだった。

「いったい、中でなにがあったの?ここで聞きたいけれど、時間も遅いし……だけど、そんなほうけた状態でこの石段を降りるのは、いくら手すりがあるといっても危ないし。どうしたものかしらね」

≪……先ほどは最後と言ったが、手助けのひとつなりしてやらんとな≫

「え?だれ?」おばあちゃんが、びっくりしたような声を出した。

「!!大天狗さん!手助けって?」

「え?大天狗さんって、どういうこと?」

「おばあちゃんにはあとで、ちゃんと話すよ。大天狗さん、出てきてくれたんだ」

≪お前の祖母殿が困っているようだったからな。ちょいと石段を下りる手助けをしてやろう……お前たちは高いところは得意か?≫

 

 「おれはだいじょうぶ」

「おれも」

「ぼくは好きなほうかな」

3人が口々に言う

「ぼくは……少し苦手だけど、大丈夫」

≪祖母殿は、どうだ?≫

「私も、基本は大丈夫……です」

≪よかろう。ならば……≫

大天狗さんがそう言うと、ぼくたちの周りで風が吹き始めた。

そして……ぼくたち5人の身体がふわっと浮いて木の上に出た。

「おおおっ!」れんが小声で叫んだ。

ぼくたちはそのまま空中を進んだ。

足元には木が茂る山が見える。

ちょっと怖いけど、きれいな景色だと思った。

≪ここでよいだろう≫

ぼくたちが下り立ったのは、洞穴へ続く山道の入り口だった。

「すっげ!空飛んだな」

智生ともき、飛ばせてもらった、だよ」

「ありがとう!大天狗さん」

≪礼がわりの余興だな。では、本当にこれで最後だ。元気で過ごせよ≫

 

 ぼくたちは帰りの車の中で、おばあちゃんの質問攻めにあった。

そのほとんどは隆之介が答えてくれて、すごくありがたかった。

……こうしてぼくたちのTPP天狗さんを助けるんだプロジェクトは、無事に終わった。

そして、夏休みも終わった。

「なんか……めまぐるしかったな」智生が言った。

「そうだね。玉を拾った時……一番最初が4月だったから……5ヵ月か」

「いろいろあったけど、楽しかったな」

ぼくは、持ち歩くのがになってしまった玉を取り出して、みんなの話を聞いていた。

そうだ、これ言っておかなくちゃ。

「ねえ、みんな。いまさらだけど、ぼくの変なお願いにつきあってくれて、いっぱい手助けしてくれてありがとう」

「なんだよ?それこそ『なにをいまさら?』だよ」智生が笑いながら言った。

「そうそう。おれらからしたら『おかげで楽しい経験ができたよ。ありがとう』だぜ」蓮も言った。

「またいつか、天狗さんたちに会えるといいね」隆之介がにっこり笑って、言ってくれた。

「うん。そのときは、また」

「「「「みんなで!」」」」

手の中の玉もキラッと光ったようだった。

 




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ビー玉を拾ったら天狗が封じ込められていたんだけど、その天狗に頼まれて元の姿を取り戻すために協力しないといけなくなったぼくたちの話を聞いてくれる? 奈那美 @mike7691

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