解説

『夜になると地蔵遊びが行われる。素直な子を選び、目を瞑らせ南天の葉か小枝を握らせる。周りで14、5人が囃し言葉を繰り返し唱えると、地蔵が憑いて体を震わせる。そして南天を震わせると周りの子が質問をする。』


高橋正義「いわきの地蔵あそび」『西郊民俗』通巻76号 1976 pp15-16.


 南天とは縁起物の葉で赤い実がなる植物の事である。


 神様や仏様を憑依させるのは一種のごっこあそびで自分の性格に「仮面」というものを付ける行為です。そして古今東西「神託」という形で共同体の意思ということで社会が動くように出来ているのです。


 なお神降ろし……つまり自分の体に憑依するとき地声では嘘とばれるので降霊術というのは一般的に腹話術を駆使して行われます。(※もちろん子供たちは腹話術が出来ずに神降ろしが演技であることがバレバレの状態で遊んでいたのが大半でしょう)


 「素直な子を選び」という部分がポイントで心の中で抑えていた自分を発露する機会でもあります。つまり地蔵菩薩の化身として自分の本音を吐くということです。


 次に「なぜ地蔵菩薩なのか」という点について。実はいわき市には「瀧夜叉姫終焉の地」の一つである。滝夜叉姫(正式名「五月姫」)が将門の無念を晴らすべく鬼となって妖術を駆使して反乱を起こすという話は創作だがいわき市四ツ倉、もしくは磐梯熱海に逃れそこで地蔵菩薩の教えを説きながら真言を毎日のように唱えてたと言われています。つまり福島という地は弥勒菩薩が救うまでの間この世を救うとされる地蔵菩薩への信仰が強くなおかつ滝夜叉姫の真言によって将門を討った敵に呪いをかけてると噂れるぐらいなので地蔵を使った一種の妖術が流行したものと思われます。


 トランスごっこというのは大変危険でけいれんを起こすなど事故が起きやすいです。よい子のみんなは絶対に真似しないように。同時に君の祖父・祖母世代まではこのようなことを少年時代にやって来たという民俗風習も同時に伝える義務があると思い筆を執った。

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地蔵遊び らんた @lantan2024

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