3月9日
起きたら、バイト先にいた。どうして私、バイト先の休憩室で寝ていたんだろう。休憩室なんてベットないしそのまま寝るなんてありえない。
それになんだろう。どこかむず痒くて止まらない。
近くには、失踪したお兄ちゃんの友達の暁月先輩がいる。暁月先輩はどこかバツが悪そうに下を向いていた。
しばらくすると、ドンドンと怒りがこもったドアの叩き方をされた。
「おい、暁月。ミクちゃんを連れて何やってんだよ。早く出てこいよ」
この声は、暁月先輩と同い年の三上先輩。三上先輩の声にはやはり怒りが込められている。本当に一体何があったんだろう。まぁ、そう言っても思い出せないけど。
でも、なんだろうどこか満たされた気分はするかな。
「別に、なんでもねぇよ。指切ったみたいだから手当てしたんだよ」
暁月先輩は休憩室を出ることなく、その場で話している。
そっか、私指切ったんだった。指切ってそれで満たされた?自分でもよくわからないや。
「それにしちゃ長くないか。20分以上も経ってるぞ。今混んでるんだよ早く戻ってこい」
三上先輩の怒りは収まることを知らないりそれはそのはず、4人で回してて混雑時なのに2人しか作業していないのだから。当然である。
…たしかに20分以上もここで寝てたんだ。私、寝不足だったわけでもないんだけどな。うーん思い出せない。
でも、お腹いっぱい。
「ミク、痛い思いさせて悪かった。ごめんな。気絶したときは、死んでしまったかと思って心配してたんだよ。ちゃんと目覚めてくれてよかった」
暁月先輩は、私のそばにかけ寄り頭を撫でてくれた。でも人間なはずなのに、どこか温かみを感じられない。
「あの、先輩。一体何があったんですか?教えてください」
私は今まで男の人と話した中で1番かわいらしく聞いていた。
あれ?やっぱり私おかしい。
すると、窓は開いていないはずなのにいきなり風が吹いてきた。と、同時に私の頭の中で誰かが囁く。成功だと。それが何を、誰のことを指しているのかがわからなかった。
「覚えていないならいいや。忘れていたほうが身のためだし。俺はもう行くからもう少し休んでから戻ってこいよ」
先輩はそう残し扉を出ていった。
出入り口付近の身だしなみチェックの鏡に暁月先輩が写っていなかったことは誰にも言わないようにしようと思った。
先輩が出て行った後、物足りなさを感じた。何が足りないのかは自分でもわからない。まあ、もともと男を引き寄せる力とかオーラ?みたいなのはあったのは知っててチヤホヤされるの当たり前だから寂しいのはあるけど。そういうのとはなんか違くて。逆にほしいって感じに近い。そう、頭のてっぺんから足の先まで全部。私に。
「ミクちゃん、大丈夫?」
三上先輩が、扉ごしから声をかけてきた。さっきとは違いすごく心配してそうな声音だ。
「入っていいかな」
店が落ち着いたからか入ってこようとする。
なんだろう。どこか興奮する。
「いいですよ」
私は悪魔のように微笑む。
「ミクちゃん、暁月に襲われなかった?大丈夫だった?」
入ってくるなり、矢継ぎ早に私にかけ寄り顔色を伺ってくる。
「それが全く覚えていなくて、襲われたとかそういうのはわからないんです」
三上先輩はほっとした表情になったが、
私は一度嬉しそうにしていたのを見逃さなかった。
「まあ、そんなことしたら犯罪だし。店側も解雇されちゃうけどね」
どこか自分に言い聞かせるかのように言っているように聞こえる。まさか…
「今日は、もう上がったらどうかな?体調も優れないんでしょう?次のシフトの人来ちゃうからお店は大丈夫だしね」
三上先輩は笑顔で言ってくる。
お言葉に甘えて帰ろうかな。もう済ませたことだし。
「それなら帰ります。あと、明日で高校卒業なので」
三上先輩の股間が少し動いたことは気にも留めず、私はロッカーから荷物を取り出し休憩室を後にした。
これですべては終わった。あとはそれで自分の○女を喪失するだけよと頭の中で誰かが囁いていた。
ある日私は、 宇田川ルキ @RUKI3939
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ある日私は、の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます