第5話:手術院牛一!
「大成功だぁ!これだ。この状況にしたかったんだよ。島津義弘が一万以上の手勢で東軍に突撃するシーン!」
俺は周りの視線も気にせず、あっけにとられる周囲の徒武者足軽の肩を叩いて踊り回った。
そうなんだよ。
この状況を作るためだけに半生をささげたんだ。
幼い頃読んだ、IF戦記。
未完のうちに筆者が亡くなって、続きが読めなくなってしまった変な関ヶ原の戦い。
これを自作して『楽しむ!』
「大筒隊。準備はいいな?」
「はい」
「火箭隊?」
「応」
「臼砲隊」
「いつでも行けます」
「鉄砲隊」
「銃列すべて準備完了」
「狙撃班。配置につきました」
じゃあ、行こうか。
「最強とうたわれる島津の突撃を火力で破砕する! 撃ち方はじめぃ!」
三○○m
臼砲発射
三〇発の直径一五cm弾が弧を描いて敵中央に弾着。
二一発が有効弾着。
鉛弾の嵐を巻き起こす。
薩摩武士が八双の構えのまま吹き飛んだ。
二五〇m
火箭一○○本、発射。
島津義弘がいそうなところを狙う。
有効弾着五五発。炮烙の破裂と共に油がナパームのように敵に付着、兵児たちを燃え上がらせる。
二○○m
ミニエー弾を使用した狙撃開始。
正確に指揮官を倒していく。
まだ突進は止まらない。
さすが薩摩武士の突進だ!
すっげ~
「銃列第一列目射撃!」
鉄砲五○○丁の弾幕射撃
五〇人以上が倒れる。
「第二列発射!」
「第三列発射!」
敵最前列はすでに四○○人は倒れている。
その後ろから士気が衰えない薩摩の猛者共。
「まだまだ。もっとひきつけろ」
周りの細川の兵が怖気づいて来た。
そろそろ第一射行くか。
「第一班射撃!」
どごおおおん!!
36ポンド砲五〇発発射
一門四〇〇発、計二〇〇〇〇発の鉛弾が、薩摩武士を甲冑もろともミンチにした。
「第二班、発射!」
「第三班、発射!」
「第四班、発射!」
・
・
・
計四○○門の大砲のダイレクトサポートアタック(直接支援射撃)!
二〇〇〇人の命と共に薩摩軍団の突進は終わりをつげ、発射の白煙が薄れてきた時には、士気が吹っ飛び腰が抜けた武士共が無様な姿をさらしていた。
「あ~~、気持ちよかった。では、さらばじゃ」
俺は現代に帰ろうとした。
あれ?
帰れない?
「どうなされた? 仁宗殿。まだまだここからですぞ。戦は」
「う、うむ。そうですな」
え~と。
このシーンだけ見たかったんですが。
この後どうなるなんて考えてもみませんでしたが?
「これから上杉勢と武田勢が南北から信長を挟撃いたしまする。臼砲と36ポンド砲で遠方の信忠勢を攻撃いたしますかな」
ニコニコ顔の細川藤孝に言われて戦況を確認する。
後ろで狼煙代わりの花火が打ち上げられたのに合わせて、全軍勢が一斉に動き出した。
よく気持ちを合わせられたな。
まあこの状況下では、もう出来ることはすべてやらないと生き残れないからな。
砲撃で士気を削られた信忠の軍勢三万が、左右から精強無比の上杉武田軍の挟撃に合い壊乱。
秀吉の二万は雑賀の鉄砲隊の前に前進できずにいる所を、背後で松尾山から駆け下りて来た明智勢を押さえきれなかったために挟撃を受けている。
それを備えを立て直した宇喜多勢と吉川勢が支えている。
柴田勢はまだ再編の途中。
伊達勢を立花勢が支える。
信長の本隊が上杉勢を側撃して一気に戦線をひっくり返そうとするが、それを佐竹勢が支える。
このままだと膠着状態。
というとき。
最後に動いたのは、やっぱりあいつだ。
十九女池付近から駆け下りてくるのは、無傷の徳川勢二万!
やはり最後に美味しい所を持って行くぜ、あのタヌキ。
毛利勢は、いまさら参戦しても遅い。
陣も防御に適した場所にしたのが災いしたな。
次第に兵の質の勝負となった。
既に開戦から六時間。
織田信長の陣は、北に伊達勢、東に上杉勢、南に武田勢。
三方向から攻められていた。
俺はこの戦の一部始終を書き留めていた。
帰ったらWeb投稿サイトにアップするつもりだったが、帰れないんだったらこの時代で史上初のIF小説家になるかな。
あ。
でもこれ、IFじゃなくなったのか?
ではノンフィクション作家で行こう。
手術院牛一とでも改名するかな?
それとも……
俺は壮絶な戦の中、呑気な考えに浸り一人ニヤニヤするのだった。
歴史を改造するのは何という楽しさなんだろう!
関ヶ原オールスターキャスト合戦絵巻!信長軍団を倒すべく集合した東国武将。西軍にはあんな武将やこんな武将も!? 🅰️天のまにまに @pon_zu
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