一之十
「なんだよ
おめえ、この
陸吾が、
幽鴳は、
「……ああ。
この、
と、遠くを見つめるような表情で言った。
続けて、
「まさか今んなって、こんな状況で出会うことになるとはなあ……。
俺ぁ、
と、話しながら、次第に目をぎらぎらと輝かせ始めた幽鴳が言った。
「中山国の……
聞いたことがあるようなないような……。
おめえ、そんな
この爺さん……何者だ?」
大岩の上の老人にちらりと目をやりながら、陸吾が幽鴳に向かって
大岩の上の老人が、黄色い歯を
「────しゃ、しゃ、しゃ!
いやいや。そうであったか。さぞ、
ふむ……しかし、過去のおぬしの
まあそらあ、見つからぬわい」
耳慣れない笑い声を発した後、
「……あ?」
「おぬしが願ったのは、『
狄希仙人が言った。
「……いや、俺はこの耳で、確かに聞いた。何度も、違う人間から耳にした! 『
それで俺は、俺にしちゃあ珍しく、
幽鴳が、力強く言った。
「
与次郎が聞き返した。
「
陸吾も、幽鴳に向かって聞き返した。
「ああ、そうだ。与次郎は酒なんざ
そしてこの目の前にいる爺さんは、────この爺さんこそが────その酒を
内に秘めた衝動を必死に抑えている様子でそう言った後、幽鴳は、
「……ああ、いかにも。千日酒を造る中山国の仙人とは、この
しかし、いくら探してもおぬしは
なぜならおぬしの
つまり本心では、おぬしは
まるで同じことのようであるように感じるかもしれぬが、これは違う。例えば
だから、出逢うことは叶わなかったのだ。軸がぶれている。ぶれていては、自身が真に手に入れたい望みを掴み取ることなどできぬ。
自身の
狄希仙人はそう言うと、目をぐ、と細めた。
「だがしかし。今、こうしてこの地へやって来れたということは……、ふむ。
なにやら、ぬしらには成し遂げなければならぬ何かがあるようだ。さすがは、
どれ。ここに来た理由と、おぬしらの真の目的を、この老いぼれにじっくりと、聞かせてもらおうか」
そう言うと老人は体勢を崩し、大岩の上で蒼頡達五人の方へ向きを変えながら、くるりと
同時に、老人の頭の上に載る酒器が少しだけぐらつき、中身の酒がちゃぽん、と小さな音を立てた。
蒼頡の言霊【第二部~華胥之国編~】 逸見マオ @HEMMA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。蒼頡の言霊【第二部~華胥之国編~】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます