牛人
中島敦/カクヨム近代文学館
牛人
翌朝、従者下僕等を集めて一々
数年後、再び故国に政変が起り、叔孫豹は家族を斉に残して
或朝、一人の女が
母子共に即刻引取られ、少年は
眼の凹んだ・口の突出た・黒い顔は、極く
叔孫豹の信任は無限であったが、
魯の
宴が終り、若い叔孫家の後嗣は快く諸賓客を送り出したが、翌朝は既に屍体となって家の裏藪に棄てられていた。
孟丙の弟
其の夜、
病が次第に篤くなり、
次の日から残酷な所作が始まる。病人が人に接するのを嫌うからとて、食事は
偶々此の家の
餓と疲れの中に泣きながら、何時か病人はうとうとして夢を見た。いや、眠ったのではなく、幻覚を見ただけかも知れぬ。重苦しく淀んだ・不吉な予感に充ちた部屋の空気の中に、ただ一つ灯が音も無く燃えている。輝きの無い・いやに白っぽい光である。じっとそれを見ている中に、ひどく遠方に──十里も二十里も彼方にあるもののように感じられて来る。寝ている真上の天井が、何時かの夢の時と同じ様に、徐々に下降を始める。ゆっくりと、
何時か夜に入ったと見え、暗い部屋の隅に白っぽい灯が一つともっている。今迄夢の中で見ていたのは矢張この灯だったのかも知れない。傍を見上げると、これ又夢の中とそっくりな
三日の後、魯の名大夫、叔孫豹は餓えて死んだ。
牛人 中島敦/カクヨム近代文学館 @Kotenbu_official
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