用事があるって言ったじゃない

 中学二年生のひつ休みの時、佳穂にこう言われた。

「今日、糸石さん家、遊びに行って良い?」


 私は少し考えた。

あー、弟が友達呼ぶって言ってたっけ? テレビゲームは出来ないだろうなー。

そして答える。

「テレビゲーム出来ないけど良い?」


 すると佳穂はいきなり、

「あっ!今日は用事があるんだった! やっぱ行かなーい」

と言うので、

「あ、そうなんだねー」

と言ってその場は終わった。




 そして佳穂は光希の方に戻り、

「糸石のやつ、すっごい役に立たないー」

「やっぱり役に立たないよねー。ゴミだよねー」

と話していた。


 なぜそう言われたのかが分からなかった。

ただ、「テレビゲームは出来ない」と言っただけなのに。

そこまで言われることだろうか?

とは思ったが、クレーマーの価値観はわからないし共有する価値もない。




 そして、なぜか今日の一緒に帰路につくメンバーは。

私、美代子、佳穂だった。

美代子と佳穂は仲が悪いけど、お互いにお互いの悪口言いつつ付き合っていた。

不思議だ。


 私がわからないと思い込んでいる話題を意気揚々とするのだ。

「バリオストロの白,面白いよねー」

「ねー」


「今週のシャンプ、面白くてー」

と佳穂が言うと、キレ気味に美代子が、

「その話、やめよう?」


「えー? なんでー?」

私は、自分だけ知らない話題だからだな、と思いつつ、佳穂のなんでー? を凄く聞いていた。




「そう言えば、美代子さん、今日うちに寄ってくるんだったよね」

と私が言うと、

「そうそう、私だけなんて恥ずかしいからね」

と音量小さめで言うと、


「そういえば、薫先輩がハマっているゲーム、持ってるって……」

と美代子が言い出した。

「あー、トリートファイターね」

と答える。


「今日、ゲームやって行く?トリートファイター持ってるよ」

と言うと、佳穂が切れ出した。




「あんた! 今日はゲームできないって言ったよね?」

確かに言ったな、後で弟に、本当にできないか確認したけど、と思いつつ。


「あー、でも、やっぱ出来るって分かったから」

と軽く言うと。

「なんで出来るってちゃんと言わないの!」

と、さらにキレる、佳穂。


「用事あるって人に、出来るよって言ったってしょうがないじゃん」

と正論を言ったつもりだったのに。

「出来るんなら、用事なんてないよ!!!」

と意味の分からないことを言い出した。


少し考えて、思い出してみる。

そう言えば、佳穂さん、家でテレビゲーム禁止されてたな、成績悪くて。


「あんたってタチ悪いね!!!トリートファイター、私もやる!!!」

と訳の分からないことを言い出した。


「……美代子さん、それで良い?」

意味が分からないが、取り敢えず訊く。

「うーん、……いいよ」

美代子が仕方がない、と言う風に言う。




なんか、美代子さんと佳穂さん呼んで、混沌の中、テレビゲームをやっていた。

二人ともエンジョイしてるなー、と思いつつ、楽しそうにしているのを見る。

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コングと呼ばれたかった女の子 糸石刃純 @derudasugida

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